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広告予算を削るならどこから|守るチャネルの決め方

広告費を削ることになったとき、まず候補に挙がるのは「ROASが低いチャネルから削る」という定番の判断です。でも、その順番で切ると、いちばん無駄な出稿ではなく、将来の売上の種を刈ってしまうことがあります。媒体が出すROASは、安く成果につながる既存客の再来訪に偏って高く出るため、ROASだけで削ると、新規を連れてくる入口を自分で閉じかねません。本記事では、削るチャネルと守るチャネルを、ROAS単独でなく「飽和度×新規獲得への寄与」の2軸で見分ける考え方を、やさしく整理します。

広告予算を削るならどこから|守るチャネルの決め方

広告費を見直すことになった。まず手が伸びるのは、管理画面でROASがいちばん低いチャネルです。そこを削れば、いちばん無駄な出稿を切れる気がします。——でも、その順番は危ないことがあります。

最初に結論をお伝えします。削減のときに「ROASが低いチャネルから削る」のは、よくある定番です。ですが、この順番はおすすめしません。媒体が出すROASは、安く成果につながる既存客の再来訪に偏って高く出ます。だからROASだけで切ると、効率が地味なだけで、本当は将来リピーターになる新規を連れてくる入口を、自分で閉じてしまうのです。削る側と守る側を分けるには、ROAS単独でなく「飽和度(増やしても伸びるか)」と「新規を連れてくるか」の2軸で見ます。この記事では、その見分け方を順番に整理していきます。

まとめ解説動画

この記事のまとめ#

  • 広告費を削るとき「ROAS(広告費に対する売上の倍率)が低いチャネルから削る」は定番の判断です。でも、媒体が出すROASは安く成果につながる既存客の再来訪に偏って高く出るため、ROASだけで切ると、新規を連れてくる入口を自分で閉じてしまうことがあります。
  • 削る側を見抜く軸は、平均のROASでなく飽和度です。出稿を増やしてももう伸びない(限界ROASが落ちた)チャネルが、増やしても効かない削り代です。見かけのROASが高くても、飽和していれば削る筆頭になります。
  • 守る側は、効率が地味でも新規を連れてくるチャネルです。判断軸はROAS単独でなく「飽和度×新規獲得への寄与」の2軸に置きます。最後の削減判断は、この2軸で順番を付けてから下します。

1. なぜ「ROASが低い順に削る」と危ないか#

結論から言うと、ROASが低い順に削るのが危ないのは、媒体の出すROASが安い既存客に偏って高く出るからです。

ROASは、広告費に対して売上が何倍になったかを表す数字です。たとえばROAS4.0なら、かけた広告費の4倍の売上がついた、という意味になります。一見すると、この数字が高いチャネルほど優秀で、低いチャネルほど無駄に見えます。だから削るときは、低い順に切ればよさそうに思えます。

ところが、ここに偏りがひそんでいます。媒体の自動配信は、安く成果につながる相手を優先します。その筆頭が、一度買ったことのある既存客の再来訪です。すでに商品を知っていて、買う気のある人にもう一度広告を当てれば、安い広告費で成果がつきます。だから、リターゲティングのような既存客に当てる広告は、ROASが高く出やすい。逆に、まだ商品を知らない新規にあてる広告は、すぐには買ってくれないので、ROASが地味になります。

つまり、ROASが低いチャネルは「無駄な出稿」とは限りません。多くの場合、それは新規を連れてくる入口です。ここをROASの低さだけで切ると、その場の数字はきれいに見えても、新規の流入が細ります。そして次の四半期に、指名検索や自然検索の売上が落ちて、初めて「種を刈っていた」と気づくのです。なぜ高ROASのチャネルほど評価に注意がいるのかは、ROASが良いチャネルほど危ない?新規と既存を分けて見るチャネル評価で掘り下げています。

チャネル別のROASを比べた棒グラフのイメージ。既存顧客向けディスプレイ広告やリターゲティング広告はROASが高く、新規認知のSNS広告や新規キーワードの検索広告は低い。最もROASが低い新規キーワードの検索広告が色分けで強調され、ROASが低い順に削ると新規の入口からまっ先に切ってしまうことを示す

そもそも、平均のROASだけでは予算の削り先は決められません。平均が同じでも中身はまるで違うからで、その理由は平均ROASでは広告予算を決められないで整理しています。だから、削る側と守る側を分けるには、ROASとは別の軸が要ります。次の章から、その2つの軸を見ていきます。

2. 削る側を見抜く|飽和した出稿から#

削る側を見抜く決め手は、平均のROASでなく飽和度です。

飽和とは、出稿を増やしても、もう売上が伸びなくなった状態のことです。これを見るには、限界ROASという見方が役に立ちます。限界ROASは、いまの予算にもう少し足したとき、その追加分が何倍の売上を生むかを表します。出稿を増やすほど、当たる相手は薄くなっていくので、限界ROASはだんだん下がります。これが十分に下がったチャネルが、増やしても効かない「飽和した出稿」です。

ここが、削る順番を決める急所になります。削り代がいちばん大きいのは、飽和したチャネルです。増やしても伸びないのだから、減らしても売上はほとんど落ちません。逆に、まだ飽和していないチャネルは、減らすと売上がそのまま落ちます。だから、平均ROASの低い順でなく、飽和した順に削るのが筋です。

注意したいのは、平均ROASが高いチャネルでも、飽和していることがある点です。リターゲティング広告は、既存客に当たるので平均ROASは高く出ます。でも、当てられる既存客の数には限りがあるので、すぐに飽和します。つまり、平均ROASは高いのに、限界ROASは低い。この「見かけは優秀だが、もう伸びない」出稿こそ、削る筆頭です。広告は増やすほど儲かるとは限らない、という飽和の見抜き方は広告は増やすほど儲かるとは限らない|EC広告の飽和の見抜き方でくわしく扱っています。

チャネル別の限界ROASを比べた棒グラフのイメージ。新規キーワードの検索広告は限界ROASが高くまだ伸びしろがあり、リターゲティング広告は限界ROASが最も低い。最も飽和したリターゲティング広告が色分けで強調され、見かけのROASが高くても飽和していれば削り代が大きいことを示す

平均ROASの高さに引っぱられず、限界ROASが落ちた出稿から削る。これが、削る側の見抜き方です。ただし、削り代を見ただけでは半分です。残り半分は、何を守るかです。

3. 守る側を見抜く|新規を連れてくるチャネル#

守るのは、効率が地味でも、新規を連れてくるチャネルです。

ここで2つのレンズを使います。1つは、チャネル別の効率です。広告費をつないだチャネルならROAS、つないでいない広告外のチャネルなら訪問あたりの売上(RPS)で、どのチャネルが効率よく売上を生んでいるかを見ます。広告以外のチャネルはROASでなくRPSで測る、という考え方は広告以外のチャネル効率の測り方|ROASでなくRPSでが入り口になります。

もう1つのレンズは、サイト全体での新規とリピーターの効率です。新規とリピーターでは、訪問あたりの売上も買う割合も大きく違います。多くの店で、リピーターのほうが効率は高く出ます。ここで大事なのは、その高い効率は、すでに集めた新規があってこそだという点です。新規の入口を切れば、将来リピーターになる人の母数そのものが減ります。新規とリピーターで売上がどう分かれているかは、新規とリピーターで売上を分ける|計測の落とし穴が入り口です。

この2つを別々のレンズとして持つと、チャネルの見立てができます。検索の新規キーワードやSNSの新規認知は、新規を連れてくる入口です。一方、リターゲティングや既存客向けのディスプレイは、すでにいる客を呼び戻しているだけのことが多い。後者は効率が高く見えても、新規を増やしているわけではありません。だから、効率の高さでなく「新規を連れてくるか」で守る側を選びます。守るのは、効率が地味でも新規を連れてくるチャネル。削る候補は、新規を連れてこない既存再活性、とくに飽和したものです。

新規獲得への寄与と効率の2軸で4つの象限に分けた図のイメージ。横軸が新規獲得への寄与、縦軸が効率。右側の新規を連れてくるチャネル(新規キーワードの検索広告・新規認知のSNS広告)は守る対象として、左側の既存を呼び戻すチャネル(リターゲティング広告・既存顧客向けディスプレイ広告)は削る候補として色分けされている。効率の高さでなく、新規を連れてくるかで削る/守るを分けることを示す

ここまでを2軸でまとめます。削るのは「飽和して限界ROASが落ちた出稿」、守るのは「効率は地味でも新規を連れてくるチャネル」です。判断軸をROAS単独でなく「飽和度×新規獲得への寄与」に置くと、いちばん無駄な出稿から削り、将来の売上の種は残せます。

考え方そのものは、むずかしくありません。むずかしいのは、これを毎回続けることです。3つの壁があります。1つ目は、各媒体の出すROASは、媒体ごとに基準がばらばらで、重複も残ること。だから削る側と守る側を、同じ基準で見比べられません。2つ目は、新規とリピーターの効率を同じ起点でそろえるには、軸を手で切り替えて、そのたびに集計をやり直す必要があること。3つ目は、飽和(限界ROASの低下)や、botや重複を除く処理が手作業前提で、予算会議の前には間に合わないことが多いことです。

RevenueScopeの解決策

削る/守るを根拠付けて決めようとすると、結局ぶつかるのは同じ壁です。考え方は分かっていても、手作業はとても重い。媒体ごとにばらばらのROASを同じ基準にそろえ、飽和度を出し、新規とリピーターの効率まで集計し直す。これが、会議の前には間に合いません。GA4や各媒体の管理画面では、ここで構造的に詰まります。

RevenueScope は、この切り分けを2つのレンズで、同じ起点から出します。1つ目は、チャネル別の効率と飽和度です。すべてのチャネルをLast-touch(最後の接点)でそろえ、botや重複を除いたあとの数字で、ROAS(広告費をつないだチャネル)と限界ROAS=飽和度を出します(表示はデモデータ)。問いかけると、こう返ってきます。

チャネルROAS(イメージ)限界ROAS(飽和度)削る/守るの見立て
検索広告(新規キーワード)1.41.7守る(新規入口・伸びしろあり)
SNS広告(新規認知)2.11.2守る(新規寄り)
既存顧客向けディスプレイ広告4.40.7削り代(既存再活性・飽和ぎみ)
リターゲティング広告4.00.4削る筆頭(飽和)

この表の読みどころは、ROASの高さと削り代が逆になっていることです。リターゲティング広告はROAS4.0と高いのに、限界ROASは0.4まで落ちています。もう飽和していて、増やしても伸びない=削り代が大きい。逆に、検索広告(新規キーワード)はROAS1.4と地味でも、限界ROASは1.7とまだ伸びしろがある。ROASの低さだけで切る対象ではありません。

2つ目のレンズは、サイト全体での新規とリピーターの効率です。

訪問者RPS(イメージ)CVR(イメージ)
新規1001.1%
リピーター2403.4%

リピーターの効率は、新規の2倍以上に見えます。でも、この高い効率は、過去に集めた新規があってこそです。新規の入口を切れば、ここに入ってくる母数が先細ります。だから、順番はこう見えてきます。守るのは、1つ目のレンズで効率が地味でも、新規を連れてくるチャネル(検索の新規キーワードなど)。削るのは、2つ目のレンズが効率よく見せる既存再活性のうち、飽和したもの(リターゲティング広告)からです。

ひとつ、はっきりさせておきます。RevenueScope が出すのは、売上・AOV・RPS・CVR・セッション数です。これをチャネル別と、サイト全体の新規・リピーター別に分けて見られます。広告費をつないだ場合は、実測ROAS・飽和度・予算配分の提案も出ます。原価を引いた利益や、お客さん1人の生涯にわたる価値(LTV)は出しません。また、「検索広告で来た新規だけの効率」のように、チャネルと新規・リピーターを掛け合わせた細かいマス目は出しません。チャネルの効率と、サイト全体の新規・リピーターの効率は、別々のレンズとして読みます。削る順番と守る対象の材料はそろえますが、最後にどこをいくら削るかの判断は、あなたが下します。

FAQ#

よくある質問#

Q. ROASが高いチャネルなら、削ってはいけないということですか?

A. そうとは限りません。見るのは平均のROASでなく、飽和度(限界ROAS)です。平均ROASが高くても、限界ROASが落ちていれば、もう増やしても伸びない飽和した出稿です。そこは削り代が大きい。リターゲティング広告のように、平均は高いのにすぐ飽和するチャネルは、むしろ削る筆頭になります。

Q. 新規を連れてくるチャネルなら、ROASが低くても全部守るべきですか?

A. 飽和しておらず(限界ROASにまだ伸びしろがあり)、新規の入口になっているなら、守る寄りで考えます。ただし、ROASが極端に低く、改善の見込みもまったくないなら、出稿そのものの見直しは要ります。守る/削るは、ROAS単独でなく「飽和度×新規獲得への寄与」の2軸で決めてください。

Q. 削る順番は、結局どう決めればいいですか?

A. 平均ROASの低い順ではなく、飽和した(限界ROASが落ちた)出稿から削ります。守るのは、効率が地味でも新規を連れてくるチャネルです。この2軸で順位を付けてから、どこをいくら削るかを決めると、いちばん無駄な出稿から切れて、将来の売上の種は残せます。

まとめ#

広告費を削るとき「ROASが低いチャネルから削る」は定番ですが、ROASだけで順番を決めるのは危ういのです。媒体の出すROASは、安く成果につながる既存客の再来訪に偏って高く出ます。だからROASだけで切ると、効率が地味なだけで、本当は新規を連れてくる入口を、自分で閉じてしまいます。その場の数字はきれいでも、次の四半期に検索や指名の売上が落ちて、初めて気づくのです。

削る側と守る側を分ける軸は、ROAS単独ではありません。削るのは「飽和して限界ROASが落ちた出稿」から、守るのは「効率は地味でも新規を連れてくるチャネル」です。まずは手もとのチャネルを、平均ROASでなく飽和度と新規への寄与の2軸で見直してみてください。削る順番と守る対象が、勘でなく根拠で決まります。

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