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ROASが良いチャネルほど危ない?新規と既存を分けて見るチャネル評価

ROASが高いチャネルは優秀とは限りません。広告媒体は放っておいても買う既存客に配信を寄せるため、ROASが高い媒体ほど既存客の再来訪に偏りがちです。新規と既存を分ける2つの数字、ROASでなく利益で見る貢献利益、そして予算を間違えずに配分する方法を整理します。

ROASが良いチャネルほど危ない?新規と既存を分けて見るチャネル評価

私自身、チャネル間で広告予算を動かすとき、つい管理画面のROAS(広告費用対効果)やCPA(顧客獲得単価)で判断を止めてしまっていました。自分側の実際の売上に戻して、チャネルごとに突き合わせることはほとんどしていなかったのです。でも、ROASが良いチャネルほど予算を増やすという判断は、ときに逆効果になります。広告媒体は「放っておいても買う既存客」に配信を寄せる性質があり、ROASが高い媒体ほど既存客の再来訪に偏っていることがあるからです。本記事は、なぜROASだけでチャネルを評価すると危ないのか、新規と既存を分ける見方、ROASでなく利益で見る方法までを整理します。

動画で1分まとめ

この記事のまとめ#

  1. ROASが高い媒体ほど既存客に偏りやすい

    広告媒体は安く買ってくれる人に配信を寄せる。それは多くの場合、放っておいても戻る既存客のこと

  2. 新規と既存は「総注文数」と「初回注文数」で分ける

    チャネルごとに2つの数字を出し、その差が既存客の再来訪(再活性化)の量になる

  3. ROASでなく貢献利益で見ると順位が変わる

    同じROASでも、低マージン商品か高マージン商品かで実際に残る利益は逆転する

  4. 新規獲得の貢献は別の物差しで評価する

    検索広告のように刈り取る媒体と、新規を増やす媒体を、同じROASで比べてはいけない

1. なぜROASが良いチャネルほど危ないのか#

結論: 広告媒体は安く買う既存客に配信を寄せるため、ROASが高い媒体ほど既存客の再来訪に偏りやすい。

ROASは、その媒体の広告経由売上を広告費で割った数字です。一見、ROASが高いほど優秀な媒体に見えます。でも、その売上が「新しいお客さんが買ったもの」なのか「もともと買うはずだった既存客が買ったもの」なのかは、ROASだけではわかりません。

広告媒体の配信アルゴリズムは、いちばん安く成果につながる人を見つけて配信を寄せます。安く成果につながる人とは、多くの場合「すでに商品を知っていて、放っておいても戻ってくる既存客」です。だから、既存客の再来訪を拾う媒体ほどROASが高く出やすくなります。

ROASが高い媒体ほど、売上に占める既存客の割合が高くなりやすい

逆に、まだ商品を知らない新規客に届ける媒体は、その場では売上につながりにくく、ROASが低く見えます。ここで「ROASが低いから」とその媒体を止めると、将来リピートしてくれるはずの新しいお客さんの入り口を、自分で閉じてしまいます。あるブランドは、ROASが低いという理由でポッドキャスト広告を切ったところ、次の四半期に検索経由の売上が大きく落ちました。その広告が、後で検索して買う人の「最初のきっかけ」を作っていたのです。

つまり、ROASが高い=優秀、という前提そのものが危うい。新規を増やしているのか、既存を再来訪させているだけなのかを、分けて見る必要があります。

2. 新規と既存を分ける2つの数字#

結論: チャネルごとに「総注文数」と「初回注文数」を出し、その差を見れば既存客の再来訪の量がわかる。

新規と既存を分けるのは、難しい分析ツールがなくてもできます。チャネルごとに、次の2つの数字を出すだけです。

総注文数        = そのチャネル経由の全注文
初回注文数      = そのうち、初めて買った人の注文
再来訪(既存)  = 総注文数 − 初回注文数

総注文数だけを見ると、どのチャネルも頑張っているように見えます。でも初回注文数を並べると、印象が変わります。総注文と初回注文の差が大きいチャネルは、その成果の多くが既存客の再来訪です。差が小さいチャネルは、新規のお客さんをちゃんと連れてきています。

総注文数と初回注文数を並べると、どのチャネルが新規を連れてくるかが見える

たとえばリターゲティング広告(一度サイトを見た人を追いかける広告)は、総注文は多いのに初回注文はわずか、ということがよくあります。これは新規獲得ではなく、戻る人をもう一度連れてきているだけかもしれません。一方で、ROASが平凡に見えるSNS広告のほうが、初回注文の比率が高い、ということも起こります。

この見方の大切なところは、ROASの良し悪しと結論が逆転しうる点です。ROASが良いチャネルが、実は既存客の再活性化に偏っている。ROASが悪いチャネルが、実は新規獲得の仕事をしている。この切り分けができて初めて、予算をどこに寄せるべきかを判断できます。

3. ROASでなく利益で見る:貢献利益という物差し#

結論: 同じROASでも、扱う商品のマージンが違えば手元に残る利益は逆転する。利益はROASでなく貢献利益で見る。

もう1つ、ROASには見えない落とし穴があります。ROASは売上を見ている数字で、利益を見ていないことです。

貢献利益(こうけんりえき)とは、売上から、その売上を作るのに直接かかった費用を引いた、手元に残る利益のことです。

貢献利益 = 売上 −(原価 + 送料 + 決済手数料 + 広告費)

ここで、広告費をどちらも50万円かけた2つのチャネルを比べてみます。

Meta広告  :ROAS 3倍・粗利率40% → 売上150万・貢献利益10万円
Google広告:ROAS 2倍・粗利率70% → 売上100万・貢献利益20万円

レポート上はMetaのほうがROASが高く、優秀に見えます。でも粗利率の低い商品を売っているので、売上のわりに手元に残る利益は薄い。逆にGoogleはROASが低くても、粗利率の高い商品を売っているため、最終的に残る貢献利益は2倍になります。ROASの順位と、利益の順位が逆転しているのです。

ROASが高いMetaより、ROASが低くても高マージンのGoogleのほうが貢献利益は大きい

広告の世界には「売上は虚栄、利益は正気(revenue is vanity, margin is sanity)」という言葉があります。売上やROASは気分が良くなる数字ですが、その裏で利益が薄ければ、事業は静かに痩せていきます。チャネルを評価するときは、ROASを利益(貢献利益)に翻訳してから比べる。これだけで、増やすべきチャネルの順位は変わります。

RevenueScopeの解決策

ROASが既存客に偏るのも、ROASが利益を映さないのも、根っこは同じです。「どのチャネルが、どんなお客さんに、どれだけの利益を、本当に作ったのか」が、広告媒体の自己申告でしか見えていないことです。

RevenueScope は広告費を入力させません。ROASを計算してくれるツールではない、という意味です。代わりに、自前のトラッキングで重複を取り除いたチャネル別の売上を、1つの画面でそろえて見せます。各媒体がばらばらに主張する数字ではなく、最後にどこから来て購入したか(Last-touch)で全チャネルをそろえた、共通の物差しです。

そのうえで RevenueScope は、チャネル別の売上を新規とリピートに分けて見られるようにしています。具体的には、チャネルごとの RPS(1セッションあたり売上) を新規・既存別に比べられます。「見かけのROASが高いだけで、実は既存客の再来訪に偏った媒体」と、「ROASは地味でも新規を連れてくる媒体」を切り分けられる、ということです。

媒体の自己申告に振り回されず、新規獲得の貢献と全体の効率を、同じ起点から見る。これが、予算配分を間違えないための次の一手です。

FAQ#

よくある質問#

Q. ROASは見なくていいということですか?

A. いいえ。ROASは媒体ごとの日々の運用改善には有効な数字です。問題は、ROASだけでチャネルの優劣を決めて予算を動かすことです。ROASで媒体の中を磨きつつ、予算配分の判断は「新規か既存か」「貢献利益はいくらか」を加えて行うのが現実的です。

Q. 新規と既存を分けるのに、特別なツールは必要ですか?

A. 最初の一歩は不要です。チャネルごとに総注文数と初回注文数の2つを出せば、差が既存客の再来訪の量になります。多くのEC管理画面やGA4でも、新規・リピートの区別は確認できます。チャネル横断で一貫した基準でそろえたい段階になったら、専用のツールを検討すれば十分です。

Q. 貢献利益はどこまで厳密に出すべきですか?

A. 最初から完璧を目指す必要はありません。まずは売上から原価・送料・決済手数料・広告費を引いた概算で十分です。大切なのは絶対値の正確さより、チャネル間の順位がROASで見たときと変わるかどうかです。順位が変われば、ROASだけの判断が危ないという証拠になります。

まとめ#

ROASが高いチャネルは、優秀とは限りません。広告媒体は安く買う既存客に配信を寄せるため、ROASが高い媒体ほど既存客の再来訪に偏っていることがあります。新規と既存は、チャネルごとの総注文数と初回注文数の差で分けられます。さらに、ROASを貢献利益に翻訳して比べると、増やすべきチャネルの順位は変わります。

最初の一歩として、主要なチャネルだけでいいので、総注文数・初回注文数・概算の貢献利益の3つを並べてみてください。ROASのレポートだけでは見えなかった「本当に守るべきチャネル」が、具体的な数字で見えてきます。

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