「予算が増えたから、ROASが一番いいチャネルに広告費を足そう」——そう考えて増額したのに、売上は伸びても利益はほとんど増えなかった。そんな経験はありませんか。原因の多くは「飽和(Saturation)」です。広告は、最初に反応のいい層から順に売れていきます。だから投下を増やすほど、追加した1円あたりのリターン(限界ROAS)は下がります。本記事では、なぜ増やすほど利益が消えるのか、その頭打ちをどう見抜くか、そしてチャネル別に増額・刷新・撤退をどう決めるかを整理します。
目次
この記事のまとめ#
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飽和(Saturation)=そのチャネルで反応する層をどれだけ使ったか。進むほど追加1円のリターンが落ちる
最初に反応のいい層から売れるため、投下を増やすほど限界ROASは下がる
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平均ROASは飽和を覆い隠す
全体のROASがまだ黒字でも、最後に足した1円分(限界)は赤字になっていることがある
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頭打ちが近いかは、広告費を増やした月に売上も同じ割合で伸びたかで見る
費用だけ増えて売上が数%しか動かないチャネルは、増額よりクリエイティブ刷新か新チャネルへの横展開が有効
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増やすべきはROAS最良チャネルではなく、増額に売上がまだ反応するチャネル
ROASが一番良くても伸びが止まっていれば増額の効果は薄い。まだ伸びるチャネルに回す
1. なぜ広告は増やすほど利益が減るのか#
広告は反応のいい層から先に売れるため、投下を増やすほど追加1円の効率が下がる。
広告を出すと、まず「今すぐ買いたい人」「もともと興味がある人」に届きます。ここはとても効率よく売れます。ところが予算を増やして配信を広げると、届く相手はだんだん「まだ購入意欲が薄い人」に移っていきます。同じ商品でも、後から届く層ほど買ってくれにくいのです。
この「後から届く層ほど売れにくい」性質があるため、広告費を増やすほど、追加した1円あたりの売上(限界ROAS)は下がっていきます。最初の10万円のROASが高くても、次の10万円、その次の10万円と足すうちに、追加分の効率はじわじわ落ちます。

これが「飽和(Saturation)」です。チャネルの中で反応してくれる層をどれだけ使い切ったかを表します。飽和が進んだチャネルにさらに予算を足しても、売上はわずかしか増えず、広告費だけがかさみます。結果として、売上は伸びたのに利益はほとんど増えない、という状態が起きます。
2. 平均ROASが飽和を覆い隠す#
全体のROASが黒字に見えても、最後に足した1円分は赤字になっていることがある。
広告管理画面に出るROASは、その期間に使った広告費全体に対する売上、つまり「平均」です。でも判断に本当に必要なのは、「次の1円を足したら、いくら返ってくるか」という「限界」のほうです。例えば、平均ROASが2.7でも、投下を増やしてきた結果、最後に足した分の限界ROASは0.8まで落ちている、ということが起こります。平均が初期の効率のいい部分に引き上げられて、後半の悪化を覆い隠すのです。

平均ROASだけを見て「まだ黒字だから増やそう」と判断すると、効率の悪い限界部分を足してしまい、利益が削れます。この平均ROASで予算を決めることの危うさは、平均ROASでは予算を決められないで詳しく扱っています。この限界の劣化は、手元の数字から見分けられます。
3. 頭打ちが近いかを、自分の数字で見分ける#
広告費を増やした月に、売上も同じ割合で伸びたか。ここが頭打ちの手前かどうかの目印になる。
「もう頭打ちなのか、まだ伸ばせるのか」を平均ROASだけで見抜くのは困難です。手元の数字だけで組み立てられる比べ方があります。あるチャネルの広告費を増やした月に、そのチャネル経由の売上も同じ割合で伸びたか。これを月ごとに突き合わせます。
| 広告費を2割増やした月の売上 | 状態 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 2割前後、ほぼ同じ割合で伸びた | 投資余地がある | 段階的に増額し、翌月も同じ比を確かめる |
| 1割ほどしか伸びない | 逓減が始まっている | クリエイティブ・ターゲティングを刷新して天井を上げる |
| 数%しか変わらない、または横ばい | 頭打ちが近い | 増額しても効率は悪化。新チャネル・新セグメントへ横展開 |
2割という幅は例です。自分が実際に動かした増減幅に置き換えて構いません。大事なのは、増やした費用の割合と、返ってきた売上の割合を突き合わせることです。季節要因やクリエイティブの入れ替えでも伸び方は変わるため、単月で結論を出さず、数か月ぶんを続けて見てください。
ポイントは、伸びが鈍ったチャネルは「もう伸ばせない」のではなく、「今のやり方では伸ばせない」という意味だということです。クリエイティブを変えたり、狙う層を広げたりすれば、反応する層が増えて天井そのものが上がります。飽和(Saturation)は、同じやり方を続けた場合の頭打ちの点を指す考え方です。
この見分け方に、飽和度という数値は使いません。広告管理画面にも、この後で紹介する RevenueScopeにも、飽和度を計算して出す機能はありません。RevenueScopeのデモ画面で飽和度が並んで見えるのは、見本ECのサンプルデータが値を持っているからで、皆さんのサイトでは出ません。実際に見るのは、チャネル別の売上とROASが月ごとにどう動いたか、です。
4. 増額・刷新・撤退をチャネル別に決める#
増やすべきはROASが最良のチャネルではなく、増額に売上がまだ反応するチャネル。
前の章の見分け方を加えると、チャネルの見え方が変わります。よくある誤解は「ROASが一番いいチャネルに予算を足す」というものです。しかしROASが最良でも、費用を足したときの売上の伸びが止まっていれば、足した分の効率はもう低い。逆にROASが少し劣っても、増額に売上がまだ反応するチャネルは、増やした分がそのまま成果になります。

判断は3つに分かれます。
- 増額:広告費を増やした分だけ売上も伸びており、ROASも黒字水準のチャネル。ここが「次の1万円」の置き場所です。
- 刷新:費用だけ増えて売上の伸びが鈍っているのに、止めたくないチャネル。クリエイティブや狙う層を入れ替えて天井を上げてから、改めて増額を判断します。
- 撤退(または保留):ROASが赤字水準のチャネル。増額に売上がまだ反応していても、効率を改善できる証拠が出るまでは増やしません。
このように、ROASと売上の伸び方を組み合わせると、「どのチャネルにいくら足し、どこを刷新し、どこを止めるか」が一枚で整理できます。広告管理画面はチャネルごとにバラバラなので、全チャネルを同じ基準で見比べることが出発点になります。
RevenueScopeの解決策
飽和に気づけない根本の原因は、各広告管理画面がそのチャネルしか見せないことにあります。1つずつ開いて数字を書き写している限り、どのチャネルの追加分が割に合わなくなっているかは、並べて比べる前の段階で見えません。各媒体のROASが単体でしか出ない問題は、媒体ごとのROASと全体のMERの違いでも整理しています。
飽和度は考え方であって、RevenueScopeが自分で推定する指標ではありません。値が供給されていれば表示しますが、供給があるのは見本ECのサンプルデータだけです。返すのは、チャネルごとの売上・RPS(1セッションあたりの売上)と、広告費を入れた期間のROASまでです。飽和しているかどうかは、その並びを見て皆さんが判断します。
RevenueScopeに広告費を入力すると、チャネル別の売上とROASが同じ表に並びます。例えば、次のような形です(一例・架空のECサイトA・30日)。
| チャネル | セッション | 売上 | RPS | 広告費 | ROAS |
|---|---|---|---|---|---|
| Google Ads | 4,000 | ¥600,000 | ¥150 | ¥400,000 | 1.5 |
| Meta | 3,000 | ¥360,000 | ¥120 | ¥200,000 | 1.8 |
| Direct | 2,500 | ¥250,000 | ¥100 | — | — |
※上の表は説明用の一例です。デモ画面は見本ECのサンプルデータ(日々更新)で動いているため、数値は異なります。広告費を入れていないチャネルは、ROASの欄が空欄のままになります。
この並びだけでは、まだ「増やすか止めるか」は決まりません。ROASはどちらも黒字水準で、表の上では両方とも増額してよいように見えるからです。ここに前の章の見方を重ねます。同じ広告費を先月から積み増してきたのに売上の伸びが鈍っているチャネルは、平均が黒字でも追加分は割に合っていない。その判断材料が、月ごとに並べた売上とROASの推移です。
もうひとつ、予算の叩き台を尋ねることもできます。ここで効くのは、配分を組み替えることより、過剰に投下しているチャネルを見つけることのほうです。現実的な月額で試すと、いま最も多く使っているチャネルの提案額が大きく削られ、その分だけ期待ROASが上がる、という形の答えが返ります。削るという結論が出るのは、そのチャネルの追加分が既に効率を落としているからです。
⚠ この叩き台は、広告費を入れたチャネルのROASだけで組み立てています。飽和度で上限を置いているわけではありません。また、期間内の広告費が少ないチャネルはROASが振れやすく、たまたま出た高いROASに配分が引っ張られることがあります。RevenueScope自身がこの点を注記付きで返すので、額をそのまま実行せず、金額の大きいチャネルから順に確かめてください。
ここでいうROASは、売上を広告費で割った売上ベースの比です。原価を引いた利益(粗利)や在庫は RevenueScopeでは出しません(売上ベースのROASと利益ベースのROASとROIの違いは別物です)。予算配分も自動入札ではなく、人が決めるための叩き台です。どのチャネルにいくら足すかの最終判断は、皆さんが下します。
FAQ#
よくある質問#
Q. 飽和(Saturation)の度合いは、どう見積もればよいですか?
A. そのチャネルに投下した広告費と、それに対する売上の伸び方を月ごとに並べます。広告費を2割増やして売上が2割伸びていれば余地があり、広告費だけ2割増えて売上が数%しか動かないなら、追加分の効率は既に落ちています。飽和度のような数値は使いません。季節要因やクリエイティブの変更でも伸び方は変わるため、単月では判断できません。
Q. ROASが黒字なら、まだ増やしてよいのではないですか?
A. 平均ROASが黒字でも、最後に足した分(限界ROAS)が損益分岐点を割っていることがあります。判断には平均ではなく限界を見る必要があります。飽和は、この限界の劣化を言い表した考え方です。平均ROASと、費用を増やしたときの売上の伸び方の両方で判断するのが安全です。
Q. 伸びが止まったチャネルは、もう使えないということですか?
A. いいえ。「今のやり方では伸びにくい」という意味です。クリエイティブを変える、狙う層を広げるといった刷新で、反応する層が増えれば天井(飽和の上限)そのものが上がります。伸びが止まった=即撤退ではなく、まず刷新を検討します。
Q. 自分のチャネルの飽和度は、どこかの画面で確認できますか?
A. 皆さんのサイトでは、飽和度という数値は出ません。デモ画面で見えるのは見本ECのサンプル値で、これは表示される数値というより、皆さんが自分の数字から読み取る見方です。読み取るのに要るのは、チャネル別の売上とROASを同じ期間で並べたもので、それを月ごとに追うと「広告費を増やした分だけ売上が伸びているか」が見えます。各広告管理画面は自分のチャネルしか見せないので、複数チャネルを1か所に集めて並べるところに横断ツールが効きます。
まとめ#
広告は反応のいい層から先に売れるため、投下を増やすほど追加1円の効率(限界ROAS)は下がります。これが飽和(Saturation)です。平均ROASはこの劣化を覆い隠すので、「平均がまだ黒字だから増やす」と判断すると利益が消えます。
最初の一歩として、チャネルごとに「いま増額したら、追加分のROASはいくらになりそうか」を考えてみてください。ROASが最良のチャネルではなく、増額に売上がまだ反応するチャネルこそが「次の1万円」の振り分け先です。
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参考文献#
- Google 「目標広告費用対効果に基づく入札について」2024年
- Meta 「予算とスケジュールについて」2024年
- Google 「キャンペーンの予算を設定する」2024年






