ECにとってemailリストはまだ価値があるのか——経験を積んだ運営者の答えはほぼ一致しています。emailは最低でも売上の20%を担うべきで、リピート購入がある商材ならもっと高くてよい、という水準感です。実際、カゴ落ち回収とリピート施策だけで売上の約5分の1がemail経由になる店も珍しくありません。では質問です——あなたの店の「メルマガの売上」、何の数字で数えていますか? 配信ツールの管理画面、GA4、カートの実注文。実はこの3つ、同じ月でもまるで違う数字を出します。本記事では、なぜズレるのかの仕組みと、3つの数え方の正しい使い分け、そして数え方を揃えた先で「次にどのチャネルへ予算を寄せるか」を判断する方法までを解説します。
まとめ解説動画
目次
この記事のまとめ#
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配信ツールの「経由売上」とGA4のEmail売上は、数え方が違うので一致しない
どちらも嘘ではない。ただし役割が違う
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配信ツールは「開封・クリックから5日以内の購入」を経由売上に数える
メールを開いただけの人が3日後に検索から買っても、全額メルマガの成果として計上される
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施策の比較は配信ツール、チャネルの比較はGA4、金額の真実はカートの実注文
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数え方を揃えるのは前提にすぎない。「メルマガ=売上の20%」と比べるにも、次にどのチャネルへ予算を寄せるか決めるにも、UTMを正規化しbot流入を除いたチャネル別の売上効率を1画面で見比べる必要がある(§5で扱う)
1. 同じメルマガの売上が、画面によって違う#
結論: 3つの画面の「メルマガの売上」は定義が違う数字なので、一致しなくて正常です。
たとえば月商500万円の店で、こんな光景がよく起きます。配信ツール(KlaviyoやMailchimpなど)の管理画面は「メール経由売上 45万円」と表示している。ところがGA4で「Email」チャネルの売上を見ると18万円しかない。2.5倍の差です。どちらかが壊れているのでしょうか。

壊れていません。数えているものが違うのです。
- 配信ツールの「経由売上」: メールを開封またはクリックした人が、その後一定期間内にした購入を「メールの成果」として計上した金額
- GA4のEmailチャネル売上: メールのリンクをクリックして来た訪問(セッション)の中で発生した購入金額[3]。最後に経由したチャネルに売上が割り当てられる数え方が基本
- カートの実注文: クーポンコードや注文データで確認できる、お金の動きそのもの
「経由売上」と「クリック訪問の売上」と「実際のお金」。3つは別の質問に答えている数字なので、差が出るのは仕様です。問題は、この違いを知らずにいちばん大きい数字だけを見て予算を決めてしまうことです。「Klaviyoは安くないが何倍にもなって元が取れる」と評価する声は多いものの、その「元が取れる」の根拠がツール自身の経由売上表示だとしたら、テストの採点を受験者本人がしている状態に近くなります。
2. 配信ツールの「経由売上」が大きく見える仕組み#
結論: デフォルト設定では「開封またはクリックから5日以内の購入」が全額メールの成果として計上されるためです。
Klaviyoの公式ヘルプによると、デフォルトの計測窓(アトリビューション ウィンドウ)はメールのクリックも開封も5日間です[1]。つまり、こういう購入も「メール経由売上」に入ります。

たとえば、お客さんが火曜日にメルマガを開いただけ(リンクは押していない)で、金曜日にGoogle検索からサイトに来て1万円買ったとします。開封から5日以内なので、この1万円は配信ツール上「メール経由売上」です。一方GA4では、最後に経由したのは検索なので「Organic Search」の売上になります。同じ1万円が、画面によって別のチャネルの売上として計上される——これがズレの正体です。
さらに、iPhoneのメールアプリにはプライバシー保護のためにメールを自動で「開封」扱いにする仕組み(Apple Mail Privacy Protection)があり、実際には読んでいない人も開封者として数えられることがあります[1]。開封ベースの計上は、この影響でさらに膨らみやすくなっています。
誤解しないでほしいのは、これは配信ツールの「不正」ではないことです。計測窓は公式ヘルプに明記され、設定で短く変えることもできます[2]。メルマガが購入の「きっかけ」になった可能性を広めに拾う、というひとつの設計思想です。ただしその数字をチャネル間の予算比較に使うと、メルマガだけ実力以上に大きく出る比較になる——ここだけは押さえてください。
3. 正しい測り方——3つの数え方を役割分担する#
結論: 1つの正解を探すのではなく、質問ごとに使う数え方を決めます。

質問①「どのメールが良かったか」→ 配信ツールで比べる。 カゴ落ちメールと新商品案内、どちらが効いたか。同じ計測窓どうしの比較なら、窓の長さの癖は打ち消し合うので、配信ツールの経由売上は施策比較の数え方として十分働きます。
質問②「メルマガはチャネルとして何位か」→ GA4で比べる。 検索・SNS・広告と並べて比較するなら、全チャネルを同じルールで数えるGA4側で見ます。メルマガのリンクにUTM(流入元を記録するタグ)を正しく付けることが前提です。Emailがどう分類されるかは「EmailやSMSはGA4で何チャネル扱い?」で、最後のクリックだけに売上が割り当てられる癖への備えは「ラストクリックだけで予算を動かすと損する」で解説しています。
質問③「実際いくら入ったか」→ カートの実注文で確かめる。 メルマガ限定クーポンの利用額や、注文データの突合が、お金の動きの最終確認です。GA4とカートの数字も完全には一致しないので、その仕組みは「GA4の売上がShopifyと合わない理由」を参考にしてください。
この役割分担に納得感があるのは、アトリビューション(売上の割り当て)論争の長年の落とし所とも一致するからです。どの計測モデルにも欠点があり、万能の正解は存在しません。だからこそ方向性の参考として、それぞれの癖を理解した上で使うのが現実的な構えになります。
4. 「売上の20%」基準と比べる#
結論: 数え方をGA4(または実注文)の1本に固定してから、売上比率を出して20%と比べます。
冒頭の「emailは売上の最低20%」という目安と自店を比べるとき、配信ツールの経由売上を分子に使うと、計測窓の分だけ比率が膨らみ、実力より良く見えます。分子と分母を同じ数え方で揃える——GA4ならGA4どうし、実注文なら実注文どうしで比率を出してください。
- 20%を大きく下回る → リスト獲得・カゴ落ち導線・リピート施策に伸びしろ。4年かけてコツコツ集めた1,400人規模のリストが、広告やSNSを上回る成果を出した例もあります。リストは借り物のアルゴリズムと違い、自分の資産です
- 20%前後〜上回る → メルマガは主力チャネル。施策単位の改善(質問①)にフェーズを移す
1つ注意があります。始めたばかりの店が「初月でメール売上ゼロ=失敗」と即断するケースですが、リストが小さいうちは統計的に何も言えません。最初の1〜2ヶ月は「誰がクリックし、誰が反応するか」のデータ収集期間と割り切るのが現実的です。
5. 数え方を揃えても、GA4にはチャネル別の売上効率の比較が無い#
結論: 数え方を1本に揃えても、GA4の標準レポートには「UTMを正規化し、bot流入を除いた、チャネル別のRPS・客単価・購入率を1枚に並べた比較表」は出てきません。チャネル間の売上効率を見比べるには、別の作業が要ります。
第3章・第4章のとおり数え方を揃えれば、「メルマガが売上の何%か」までは出せます。しかし、その先で本当に知りたいのは「メルマガは検索や広告と比べて、1回の訪問あたりどれだけ売れているか」「次の予算をどのチャネルへ寄せるべきか」です。これはGA4の標準レポートだけでは答えられません。
GA4は参照元/メディアごとのセッション数・コンバージョン数までは出しますが、UTMの表記揺れを名寄せし、bot流入を除いた1セッションあたり売上をチャネル間で見比べるには、探索レポートを手組みする作業が要ります。次のような問いには、数え方を揃えても標準レポートだけでは届きません。
- メルマガとOrganic Searchで、1セッションあたりの売上はどちらが高いか
- メルマガ経由の購入率は、広告経由と比べて何倍か
- いま予算を厚くすべきは、メルマガのリスト獲得か、それとも別チャネルか
これらは「どのチャネルに次の予算を寄せるか」を決めるための、いちばん知りたい問いです。数え方を揃えたうえで、bot流入を除いた1セッションあたりの売上をチャネル間で見比べる——この比較ができる状態は、標準レポートの外に別途用意する必要があります。
RevenueScopeの解決策—名寄せした後のチャネル別の実売上を1画面で見比べる
結論: RevenueScopeは、全チャネルを同じルールで集計し、bot流入を除いた実売上で、メルマガ・検索・SNS・広告のRPS(1セッションあたり売上)・客単価・購入率を1画面に並べます。
第3章の質問②(チャネルとしての比較)を、毎回GA4でUTMの分類を確かめながら手組みする代わりに、最初から見られる状態にするのが RevenueScope の役割です。配信ツールの計測窓にも、UTMの表記揺れにも、bot流入にも影響されない、チャネル比較専用の共通の数え方です。
上の画面(表示はデモデータ・第1章の店とは別の例です)では、メルマガはセッション800と流入は小さいのに売上100万円・RPS 1,250円。この店の月商はおよそ500万円なので、メルマガの売上比率は約20%——ちょうどベンチマークの水準です。RPSが全チャネルで最も高い、つまり「1回の訪問が最も買い物につながるチャネル」であることも分かります。だから次の一手は「リスト獲得の入口(登録フォーム・特典)に投資して、この高効率チャネルの分母を増やす」と、売上を根拠に判断できます。
FAQ#
Q1. 配信ツールの計測窓は短くした方がいいですか?
チャネル間の比較をツール側の数字でやりたいなら、クリックのみ・1〜3日などに絞ると実態に近づきます[2]。ただし第3章のとおり、チャネル比較はGA4側でやる役割分担にすれば、ツール側はデフォルトのまま施策比較に使えば十分です。
Q2. GA4でメルマガが「Email」チャネルに出てきません。
メールのリンクにUTMが付いていないと、Direct(直接流入)などに紛れます。utm_medium=email を付けるのが最も確実な方法です[3]。詳しくは「UTMパラメータの正しい使い方」を参照してください。
Q3. メルマガの売上には、どこまで含めるべきですか(カゴ落ちメール・再入荷通知など)?
目的によります。「配信施策全体の貢献」を見るなら自動配信(カゴ落ち・再入荷)も含め、「ニュースレターの企画力」を見るなら一斉配信だけで比率を出します。大事なのは、毎回同じ範囲で数えて推移を見ることです。
まとめ#
- 配信ツールの「経由売上」・GA4のEmail売上・カート実注文は、数え方が違う3つの数字。一致しなくて正常
- ツールのデフォルトは「開封・クリックから5日以内の購入」を全額メールの成果に計上する。チャネル比較に使うとメルマガだけ大きく出る
- 施策比較はツール、チャネル比較はGA4、金額確認は実注文——質問ごとに数え方を決める
- 数え方を揃えるのは前提。その先でbot除外後のチャネル別RPSを1画面で見比べて初めて、「次にどのチャネルへ予算を寄せるか」を売上で判断できる
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