Google Search Consoleでブランド名を含む検索キーワードだけに絞ると、表示回数が3か月続けて下がっている。掲載順位は1位のまま、クリック率もほとんど変わっていない。それでも表示回数だけが落ちていく、という状態があります。
目次
この記事のまとめ#
- 指名検索の表示回数は「名前で検索した回数」に近い数値。順位もクリック率も動かずに表示回数だけ減るなら、検索する行為そのものが減っている
- 原因の候補は季節性、指名連動の広告の停止、ブランド想起の低下、検索からAIへの移動の4つ。確かめるデータが原因ごとに違う
- AIへの移動を疑うなら、指名クエリの表示回数の前期比と、GA4のAI Assistantチャネルの増減を比較する
- AI経由の参照は市場全体でも伸びている。単一ドメインのログを分析した研究では、ChatGPT経由の参照が5.7倍に伸び、その大半はプラットフォーム側の成長で説明できたと報告されている[4]
- 自社のAI経由流入が増えていても、それが市場の伸びなのか自社への指名なのかは、量ではなく1訪問あたりの売上で見分ける
1. 指名検索の表示回数が減るとき、何が起きているか#
Google Search Consoleの表示回数は、検索結果に自社のページが表示された回数です[1]。指名検索、つまり自社名やブランド名を含む検索キーワード(Google Search Consoleの画面では「クエリ」と呼ばれます)に絞った場合、自社のページはほぼ確実に上位に表示されます。だから表示回数は「その名前で検索された回数」にかなり近い値になります。
ここが非指名のキーワードと違うところです。「ec 分析 ツール」のような一般的なキーワードなら、表示回数の増減は順位変動でいくらでも動きます。ところが指名検索は最初から1位なので、順位で説明できる余地がほとんどありません。順位が変わっていないのに表示回数が減ったなら、検索する人が減ったと読むしかなくなります。
そしてこの数値は、クリック数より先に変化します。検索する人が減れば、まず表示回数が落ち、クリックは後から追いかけて落ちます。売上への影響が出るころには、表示回数はもっと前から下がっていたことになります。
指名検索は普段「安泰な数字」として扱われがちです。既存客の再訪が多く、SEOの成果を実力以上に見せてしまうため、実力測定の場面ではむしろ除いて見ます(流入は増えたのに新規が増えない)。ただし除いて見るのと、減っていることに気づかないのは別の話です。
2. 原因は4つ考えられる#

まず疑うのは季節性です。前年の同じ月と比べて同じ形の落ち込みがあるなら、今年だけの異常ではありません。前月比だけを見ていると、毎年起きている谷を毎回新しい問題として扱うことになります。
次が広告です。指名キーワードに連動した広告を出していた期間があるなら、その出稿を止めた月と表示回数が落ち始めた月が重なっていないかを見ます。広告で名前を知った人がその後に検索する分まで、出稿停止の後から遅れて減っていきます。
3つ目がブランド想起そのものの低下です。これは自社データでは判定できないので、Google トレンドのような第三者のデータで長期の推移を見ます[5]。ただしこちらもサンプリングされた相対値なので、絶対的な減少幅の根拠には使えません。
4つ目が、検索の外への移動です。名前を知っている人が、検索窓に打ち込む代わりにAIアシスタントに尋ねている場合。この可能性を確かめる手順が次の章になります。
打ち手はこの4つで真逆になります。季節性なら待つ。広告停止なら出稿を戻すかどうかの判断。想起低下ならブランド側の施策。AIへの移動なら、AI側の受け皿と計測の整備です。原因を決めずに「指名検索が減ったから広告を出す」と動くと、季節性の谷に予算を投じることになります。
3. 指名の減少とAI経由の増加が同時に起きているか#
AIへの移動を疑うときに見るのは、2つの値の向きです。片方はGoogle Search Consoleの指名クエリ、もう片方はGA4のAI Assistantチャネルのセッション数。GA4のこのチャネルは2026年5月13日に追加されたもので[2]、参照元の媒体が「ai-assistant」と一致する訪問が入ります[3]。ChatGPTやGemini、Claudeなどが該当します。
向きを最初に見るのは表示回数ですが、規模を比べるときはクリックのほうを使ってください。表示回数は万の単位、AI経由のセッションは百の単位になることが多く、そのまま比べると片方が潰れて見えません。

前者が下がり、後者が同じ期間に上がっているなら、名前で探す行為の一部がAI側へ移った可能性があります。ただしこれは相関であって、因果ではありません。AI経由の参照は市場全体としても伸びているからです。単一ドメインのログを分析した研究では、ChatGPT経由の参照トラフィックが5.7倍に伸びた一方で、その伸びの大半はサイト側の施策ではなくプラットフォーム側の成長で説明できたと報告されています[4]。対象は1ドメインの分析で、著者自身も結果は示唆的で決定的ではないとしています。つまり自社のAI経由流入が増えていても、それが自社への指名が移ってきた分なのか、市場全体が伸びた分なのかは、増えたという事実だけでは分けられません。
確かめる材料には限りもあります。GA4のこのチャネルには自動アクセスが混じる可能性があり(GA4のAIアシスタント流入|botと売上の死角に注意)、Google Search Console側のデータには2〜3日の遅れがあって、Google検索以外は含まれません。
ここで「AIに直接聞いて確かめよう」と考えたくなりますが、その確認は毎回答えが揺れます(ChatGPTで自社名を1回聞いて確かめる限界)。AIの中で自社がどう扱われているかの測り方は別の話として整理しています(AI検索でのブランドの見え方/中堅ECのAI可視性チェック)。この記事で扱うのは、聞きに行かずに自社に残った記録だけで判断する筋道です。
4. 移った指名を、売上で受け止められているか#
仮に移動が起きているとして、次に確かめるのは受け皿のほうです。
名前を知ったうえでAIに尋ねている人は、指名検索で来ていた人と同じ性質を持ちます。買う目的がはっきりしていて、価格や在庫や購入方法を確かめに来ます。ところがセッション数だけで見ると、AI経由は指名検索の数分の1の規模にしか見えません。月次の報告では誤差として扱われる大きさです。
見るべきは1訪問あたりの売上(RPS)です。AI経由のRPSが指名検索と同じかそれ以上なら、移動した分は受け止められています。逆にAI経由だけRPSが低いなら、着地したページに指名で来た人が探すものが揃っていない、ということになります。
問題は、この2つが同じ画面に表示されないことです。指名クエリの表示回数はGoogle Search Console、AI経由のセッションはGA4、そして売上はさらに別の場所。3つを跨いで毎月同じ突き合わせを続けるのは、手作業では続きません。
RevenueScopeの解決策
RevenueScopeでは、AIアシスタント経由の流入が独立したチャネルとして表示されます。ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexity・Copilotが別々の行として表示され、それぞれにセッションと売上とRPSが付きます。指名検索の受け皿になっているかどうかは、この行のRPSを他のチャネルと比べれば分かります。
検索キーワードの側は、Google Search Consoleのクリックに前の期間との比較が付きます。表示回数は当期の値として表示されるので、ブランド名を含むキーワードの推移は、クリックの前期比を軸に読むことになります。キーワード単位では前期比まで、日次の動きはページ単位のトレンドで追えます。
減った分は、どこへ行ったのか#
架空店舗Cで、ブランド名を含むキーワードを拾って合算し、前の期間と直近を並べてみます。
| 見る対象 | 前の期間 | 直近 |
|---|---|---|
| 指名クエリのクリック | 900 | 500 |
| AI経由のセッション | 100 | 400 |
| AI経由のRPS | 300円 | 520円 |
※ 架空店舗Cの数値は説明のために丸めた作例です。デモは見本ECのライブデータで動いているため、同じ並びを開いても値は違います。
指名クエリのクリックが400減る一方で、AI経由のセッションは300増えています。訪問の数だけを見れば、まだ減った分を埋めきっていません。ところがAI経由のRPSは300円から520円へ上がっていて、1訪問あたりの売上は伸びています。数は少なくても、訪問者はきちんと購入している。移った先が受け皿として働き始めている形なので、AI経由の着地ページに手を入れる価値があると判断できます。
FAQ#
よくある質問#
Q. 指名検索が減っていても、売上が落ちていなければ問題ないのでは?
A. 売上に表れていないなら、今月の判断としては急務ではありません。ただし順番としては表示回数が先に変化し、クリック数が追いかけ、売上はさらに後から効いてきます。まだ売上が変わっていない時期は、原因を切り分けるのにいちばん都合のいい時期でもあります。
Q. ブランド名を含むキーワードは、どう抽出すればいいですか?
A. Google Search Consoleの検索パフォーマンスレポートで、クエリに自社名やブランド名を含む条件でフィルタをかけます[1]。表記ゆれ、英字表記、よくある打ち間違いも別の条件として拾ってください。ここを狭く取ると、減っている分を見逃します。
Q. AI経由のセッションが増えていません。移動は起きていないということですか?
A. そうとは限りません。AIアシスタントは参照元の情報を必ず渡すわけではないので、AI経由として数えられるのは実際より少ない値です。増えていないことは、移動が起きていない証拠にはなりません。判断は、増えている場合のほうが確度が高くなります。
Q. AIに自社名を聞いて、どう答えるか確かめたほうが早くないですか?
A. 同じ質問でも答えが毎回変わるので、1回や2回の確認では傾向を読めません。自社に残った記録のほうが、同じ条件で毎月比べられる分だけ判断に使えます。
まとめ#
指名検索の表示回数が減っているとき、そこで減っているのは順位ではなく、名前で検索するという行為そのものです。原因は季節性、指名連動の広告の停止、ブランド想起の低下、検索からAIへの移動の4つが考えられ、打ち手はそれぞれ逆を向きます。前年同月と比べる、出稿履歴と照らす、第三者のデータで長期推移を見る、AI経由の流入と並べる。確かめるデータが原因ごとに違うので、決め打ちで対応すると外します。
AIへの移動が疑われる場合も、増えたという事実だけでは自社への指名が移ったのか市場全体が伸びたのかを分けられません[4]。分けるのは量ではなく、1訪問あたりの売上です。
月に1度、指名クエリの表示回数の前期比と、AI経由の流入とRPSを併せて記録してください。その2つの向きが変わった月が、打ち手を変えるタイミングです。
どの広告が売上を生んでいるか、一目でわかる
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参考文献#
- [1] Google Search Console ヘルプ 「検索パフォーマンス レポート」 2026年
- [2] Googleアナリティクス ヘルプ 「Googleアナリティクスの新機能」 2026年
- [3] Googleアナリティクス ヘルプ 「[GA4] デフォルト チャネル グループ」 2026年
- [4] Watanabe, K. & Nakayashiki, K. 「Disentangling Answer Engine Optimization from Platform Growth: A Log-Based Natural Experiment on ChatGPT Referral Traffic」 arXiv 2026年
- [5] Google トレンド ヘルプ 「Google トレンドのデータ」 2026年



