「ROASの目標は、いくつにすればいいですか」——よく聞かれる問いです。業界平均は4倍くらい、と聞いて4倍を目標に置く。でも、その数字に根拠はありますか。目標ROASは、他社の平均から借りてくるものではなく、自分の店の損益分岐ROAS(広告費が赤字にならない最低ライン)から決めるものです。さらに、店全体で「ROAS 4倍」と1つの目標を置くと、チャネル(Google広告・Meta広告など)ごとの効率の差が、平均に隠れて見えなくなります。本記事では、損益分岐から目標をどう逆算するのか、なぜチャネル別に目標を置くのか、そして達成度と飽和度で増やす・絞るをどう決めるのかを、順番に整理します。
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この記事のまとめ#
- ROASの目標値は、業界平均からでなく、自店の損益分岐ROAS(赤字にならない最低ライン)から決めます。損益分岐は粗利率から逆算でき、そこに利益の上乗せ分を足したものが目標になります
- 店全体で1つの目標にすると、チャネルごとの効率の差が平均に隠れます。Google広告とMeta広告では損益分岐も効率も違うので、目標はチャネル別に置きます
- チャネル別に「目標への達成度」と「飽和度(これ以上増やしても効率が落ちないか)」を見て、増やす・絞るを決めます。目標を超えていても、飽和していれば増やせません
1. ROAS目標は、まず損益分岐ROASから決める#
結論から言うと、ROASの目標値は、業界平均からでなく、自分の店が赤字にならない最低ライン——損益分岐ROASから決めます。
ROAS(広告費用対効果)は、広告経由の売上を広告費で割った数字です。「ROAS 400%」なら、広告費1に対して売上4。ですが、売上4のうち、いくらが利益として手元に残るかは、粗利率(売上から原価を引いた割合)しだいです。粗利率が低い商品なら、ROASが高く見えても、広告費を引くと赤字、ということが起きます。だから、目標を置く前に、まず「これを下回ると赤字になる」という損益分岐ROASを出します。損益分岐ROASは粗利率から逆算でき、計算方法は粗利率別・損益分岐点ROASの計算方法で詳しく扱っています。
損益分岐ROASが分かったら、そこに「いくら利益を残したいか」を上乗せした数字が、目標ROASになります。たとえば損益分岐が250%なら、利益を確保するために目標は350%、というふうに置きます。目標は「他社が4倍だから4倍」ではなく、「自店は損益分岐250%+利益分で350%」と、自分の数字から決める。これが出発点です。なお、Google広告では、こうして決めた目標ROASを入札の基準として設定でき、ショッピング広告でも同じように目標を置けます[1][2]。

2. 店全体で1つでなく、チャネル別に目標を置く#
結論から言うと、目標ROASは店全体で1つにせず、チャネル(広告の出し先)ごとに置きます。平均に隠れる差を見落とさないためです。
「店全体でROAS 4倍」と1つの目標を置くと、達成しているかどうかは分かります。ですが、その4倍が、どのチャネルの集まりでできているかは見えません。たとえば全体が4倍でも、内訳はGoogle広告が6倍、Meta広告が2.5倍、ということがあります。平均だけ見て「目標達成」と安心していると、足を引っ張っているMeta広告に気づけません。逆に、好調なGoogle広告にもっと寄せる余地にも気づけません。
チャネルごとに目標を分ける理由は、もう一つあります。チャネルによって、損益分岐も、得意な役割も違うからです。すでに欲しい人を捉える検索広告と、これから欲しくなる人に届けるSNS広告では、その場のROASが違って当然です。同じ目標を当てると、新規開拓のチャネルを「未達」と切ってしまいかねません。だから、目標はチャネルの役割に合わせて、別々に置きます。

3. 達成度と飽和度で、増やす・絞るを決める#
結論から言うと、チャネル別に「目標への達成度」と「飽和度」の2つを見て、予算を増やす・絞るを決めます。
達成度は、そのチャネルの実際のROASが、目標ROASにどれだけ届いているか。100%なら目標どおり、120%なら目標を超えています。ですが、達成度だけでは「増やしていいか」は決められません。ここで飽和度(サチュレーション)を合わせて見ます。飽和度とは、そのチャネルにこれ以上広告費を足しても、効率が落ちないかの目安です。
たとえば、目標を超えていて(達成度120%)、まだ飽和していない(飽和度が低い)チャネルは、増やす好機です。一方、目標は超えていても、すでに飽和している(飽和度が高い)チャネルは、増やしても効率が落ちるだけなので、現状維持。目標未達のチャネルは、増やす前に、入り口のずれや配信の中身を見直します。達成度だけ、あるいは予算だけで判断すると、「好調なのに飽和したチャネルに注ぎ込んで効率を落とす」という失敗が起きます。2つを合わせて見ることが、増やす・絞るの判断を正確にします。

RevenueScopeの解決策
ROASの目標を、チャネル別に置いて運用しようとすると、結局ぶつかるのは同じ手間です。チャネルごとに実際のROASを出し、それぞれの目標と見比べて達成度を測り、さらに「これ以上増やして大丈夫か」という飽和度まで合わせて見る。これを毎月、手作業でそろえ続けるのが重いところです。
RevenueScope は、この見比べを肩代わりします。チャネル別の実際のROASを、設定した目標に対する達成度として示し、さらに飽和度まで合わせて1つの画面で見られるようにします(表示はデモデータ)。
| チャネル | 実ROAS | 目標への達成度 | 飽和度 |
|---|---|---|---|
| Google ショッピング | 4.8倍 | 120%(目標4.0倍を超過) | 38%(増やす余地あり) |
| Meta Advantage+ | 2.6倍 | 65%(目標4.0倍に未達) | 84%(飽和に近い) |
| Google P-MAX | 3.9倍 | 98%(目標4.0倍にほぼ到達) | 56% |
この表の読みどころは、達成度と飽和度を組み合わせると、打ち手がはっきりすることです。Googleショッピングは目標を超え(120%)、まだ飽和していない(38%)ので、増やす好機。Meta Advantage+は目標未達(65%)なうえ飽和に近い(84%)ので、増やす前に配信の中身を見直す対象です。店全体の平均ROASだけ見ていたら、この2つの違いは見えません。チャネル別に達成度と飽和度をそろえると、どこを増やし、どこを絞るかが、根拠を持って決められます。
ひとつ、はっきりさせておきます。損益分岐ROASそのものの計算(粗利率からの逆算)は、別の記事で扱う範囲です。RevenueScope が肩代わりするのは、置いた目標に対して、チャネル別の実ROAS・達成度・飽和度を同じ画面でそろえて、増やす・絞るの材料を整えるところ。粗利や在庫までは計算しません。目標値をいくつに置くか、最後にどこへ寄せるかは、あなたが決めます。
FAQ#
よくある質問#
Q. 損益分岐ROASは、どう計算しますか?
A. ざっくりは「100% ÷ 粗利率」で求められます。たとえば粗利率が40%なら、100 ÷ 0.4 = 250%が損益分岐ROASです。これを下回ると、広告経由の売上では原価と広告費をまかなえず、赤字になります。送料や決済手数料まで含めるとより正確になります。計算の詳しい手順と業種別の目安は、粗利率別・損益分岐点ROASの計算方法を参照してください。
Q. 業界平均のROASは、目標にしてはいけませんか?
A. 参考にはなりますが、そのまま目標にはしないほうが安全です。業界平均は、粗利率も商品単価も違う他社を含んだ数字です。粗利率が高い店なら、平均より低いROASでも利益が残りますし、粗利率が低い店なら、平均ROASでも赤字になり得ます。まず自店の損益分岐ROASを出し、そこに利益分を足す。業界平均は「自分の数字が大きくずれていないか」を確かめる目安として使うのが安全です。
Q. チャネルごとに目標を変えると、管理が複雑になりませんか?
A. 最初は店全体の損益分岐から共通の下限を決め、そのうえで役割の違うチャネル(新規開拓と再来訪など)だけ目標を分ける、という段階で十分です。全チャネルに別々の目標を細かく設定する必要はありません。大事なのは、平均に隠れた「足を引っ張るチャネル」と「もっと寄せられるチャネル」を見落とさないこと。そのために、まず2〜3の役割で分けるところから始めると、複雑になりすぎません。
まとめ#
ROASの目標値は、業界平均から借りてくるものではなく、自店の損益分岐ROAS(赤字にならない最低ライン)から決めます。損益分岐は粗利率から逆算でき、そこに残したい利益分を上乗せした数字が、目標になります。
そして、店全体で1つの目標にすると、チャネルごとの効率の差が平均に隠れます。Google広告とMeta広告では損益分岐も役割も違うので、目標はチャネル別に置きます。そのうえで、目標への達成度と、これ以上増やせるかの飽和度を合わせて見て、増やす・絞るを決めます。
目標を超えていても飽和していれば増やせない。未達なら増やす前に中身を見直す。チャネル別に達成度と飽和度をそろえて見れば、広告予算を「なんとなく」でなく、根拠を持って配分できます。
