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モールで売れて自社ECで売れない|原因は商品でなくチャネル

モールで月310件売れている商品が、自社ECでは20件。同じ商品を同じ価格で置いているなら、原因は商品力ではありません。違うのは入口です。モールでは集客の入口をモールが持っていて、自社ECでは入口を自分で作ります。SNS・検索・広告・メールは、来る人の理由がそれぞれ違います。だから入口ごとに1セッションあたりの売上を出さないまま商品ページを直しても、注文は増えません。架空店舗の一例では、セッションが最も多いSNSのRPSが12円で最下位、上位2つの入口はRPSの差が3%しかなく、決め手は表の外にありました。商品ページの改善から、購入者が通る入口への集客の集中へ、打ち手を切り替える順番をお伝えします。

モールで売れて自社ECで売れない|原因は商品でなくチャネル

ECモールでは月に何百件も出ている商品が、自社ECではひと桁。商品も価格も同じなら、差がついているのは商品の外側、訪問を生んでいる場所の作りです。商品ページを直す前に、どの入口=チャネルが購入者を生んでいるかを確かめます。

この記事のまとめ#

  • 同じ4商品がモールで月310件、自社ECで20件。売れる順番が一致しているなら、差は商品力ではなく入口の作りにある
  • モールでは集客の入口をモールが持っている。自社ECはSNS・検索・広告・メールと、訪問する理由が異なる入口を自分で作る
  • 入口ごとに1セッションあたりの売上を出すと、セッションが最も多い入口が最も稼げない入口になることがある
  • 架空店舗の一例では、SNSが620セッションで12円、Google検索が340セッションで226円。量の首位と稼ぐ力の首位が別の入口にある
  • 上位2つの入口はRPSの差が3%。決め手は効率ではなく、検索から見込めるセッションの増加分の側にあった

1. 商品ページを3か月直しても注文が増えなかったとき#

3か月前に決めたのは、商品ページの作り直しでした。写真を白背景で撮り直し、説明文にサイズと素材を足し、購入後のレビュー依頼メールまで組みました。作業は全部終わりました。自社ECの注文は、月18件から20件になりました。

同じ4商品は、モールでは月310件売れています。

この3か月で減ったのは在庫ではなく、原因を突き止める時間のほうです。そして手をつけていなかったことが1つあります。自社ECに訪問している人の入ってきたチャネルと、そのうち購入した人の割合です。ここを見ないまま、原因を商品ページだと決め打ちしていました。

架空店舗Kの同じ4商品について、モール側と自社EC側の月間注文数を2系列の棒で対比した図。保存容器セットは120件と8件、カッティングボードは84件と5件、耐熱グラスは61件と4件、ステンレス鍋は45件と3件。売れる順番は両方で一致しているのに、合計は310件と20件で約15倍の開きがある(架空の一事例)

架空店舗Kの一例で、同じ4商品の月間注文数を対比するとこうなります。保存容器セットはモールで120件、自社ECで8件。木製のカッティングボードは84件と5件。耐熱グラスは61件と4件。ステンレス鍋は45件と3件。合計すると310件と20件で、自社ECの注文はモールの15分の1ほどです。

注目したいのは、売れる順番が一致していることです。モールで一番売れている保存容器セットは、自社ECでも1位です。順番が同じで、全体の量だけが15分の1。この形のとき、疑う先は商品ではありません。

商品力が原因なら、モール側でも同じ商品が同じように苦戦します。両方に同じものを同じ価格で置いて、片方だけ量が桁で違うなら、違いは商品の外側にあります。

2. モールと自社ECは、入口の作りが違う#

差が出ているのは、集客の入口を誰が用意しているかです。

モールに出店すると、集客の入口はモール側にあります。買い手はモールを開き、モールの検索窓に商品名を入れて、一覧から選びます。出店者が作るのは商品ページで、そこへ人を運ぶ経路はモールの仕組みの中にあります。だから商品ページを整えた分が、そのまま結果に返ってきやすい構造です。

自社ECは反対です。入口を自分で作ります。SNSの投稿、Google検索、広告、メール、パッケージや名刺に刷ったURL。それぞれの入口から訪問する人は、訪問理由が違います。SNSで写真を見て開いた人と、商品名で検索して開いた人が、同じ動機で訪問しているとは限りません。同じ商品ページに、性質の違う訪問が混ざって届きます。

ここで断定できるのは、入口の性質が違うところまでです。モールの検索から訪問する人のほうが購入意欲が高い、という比較は、公表された統計では確かめられていません。確かめ方は、自社EC側で入口ごとに1セッションあたりの売上を出すことです。この確かめ方は、あとの章で扱います。

背景の数値も押さえておきます。経済産業省の調査によると、2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円で、前年の24.8兆円から5.1%増えました[1]。市場は縮んでいません。自社ECで注文が入らない理由を、EC市場そのものに求めるのはここで筋が通らなくなります。

同じ調査はEC化率も出しています。BtoC-ECのEC化率は9.8%で、前年から0.4ポイント増えました[2]。ただしこの9.8%は物販分野の平均で、分野別の差はかなり大きいです。書籍、映像・音楽ソフトは56.45%。生活家電、AV機器、PC・周辺機器等は43.03%。生活雑貨、家具、インテリアは32.58%です[2]。ECで買われる度合いは、この3つの分野の間だけでも2倍近く開きます。自社ECの成否を、ひとつの平均値で語れないということです。

なお、この調査はモールと自社ECの内訳を出していません。「モールでは売れる」という側の根拠にはならないので、ここで使えるのは、市場が伸びていることと、カテゴリで前提が違うことの2点だけです。市場もカテゴリも説明にならないなら、残るのは自分のサイトのデータです。

3. 「売れない」を分解すると、商品の話ではなくなる#

注文が入らない原因は、来た人の数と、来た人のうち買った割合に分かれます。

自社ECの注文が月20件だったとします。この20件は、セッション数と、購入に至った割合の掛け算です。どちらが足りないのかで、打ち手が変わります。人が足りないなら集客の話です。割合が低いなら商品ページやカートの話です。商品ページを3か月直すという判断は、後者だと決め打ったことになります。

分解は入口ごとにやります。サイト全体でひとつの割合を出しても、性質の異なる訪問が混ざった平均になるだけです。

架空店舗Kの自社EC側の入口5つを、横軸にセッション数、縦軸に1セッションあたり売上を取った4象限に配置した図。SNSは620セッションで12円と右下、広告は260セッションで55円、Google検索は340セッションで226円、Directは180セッションで232円と左上、メールは90セッションで180円。量の首位と稼ぐ力の首位が別の入口にあることを示す(架空の一事例)

架空店舗Kの一例で、自社EC側の入口を2つの軸に置くとこうなります。横軸がセッションの量、縦軸が1セッションあたりの売上です。この1セッションあたりの売上をRPS(セッションあたり売上=1回の訪問がいくら稼いだか)と呼びます。

SNSは620セッションでRPSが12円。量では首位で、稼ぐ力では最下位です。広告は260セッションで55円。Google検索は340セッションで226円。Directは180セッションで232円。メールは90セッションで180円です。量の首位と、稼ぐ力の首位が別の入口にあります。

合計は1,490セッション、売上は約15.7万円です。注文20件なので、CVR(成約率=購入に至ったセッションの割合)は1.3%になります。ここで効いているのは構成です。SNSは全セッションの4割を生んでいますが、売上への貢献は0.7万円で、全体の5%に届きません。逆にDirectとGoogle検索の2つで、売上の75%を作っています。

この形が見えると、商品ページの話は後ろに下がります。届いている訪問の4割が、売上にほとんど繋がっていない入口から来ています。商品ページをどれだけ整えても、その4割の人が来た理由は変わりません。3か月かけて18件が20件になったのは、直し方が悪かったからではなく、直した結果を受け取る母数の中身が変わらなかったからです。

GA4でも、チャネル別のセッションと売上は確認できます。足りないのはその先で、1セッションがいくら稼いだかという情報が、チャネルの一覧に用意されていません。セッションと売上の2つの情報を取り出して、入口ごとに自分で割り算をして、月が変わるたびに同じ作業をやり直すことになります。指標そのものの意味と出し方はRPSとはにまとめました。

モール側の管理画面には、この計算の材料がそろっていません。自社EC側の流入はモールの画面に含まれないからです。これは仕組みの話で、どちらの画面が優れているかという比較ではありません。同じ注文でも集計する側が変われば件数が一致しない、という話とも近い構造です。数値が合わない理由はアフィリエイト成果が合わないで扱っています。

もうひとつ、時期の話があります。注文が20件の規模だと、1件増えるだけで入口の順位が入れ替わります。この期間に割合で優劣を決めても、翌月まで結論が残りません。決められるのは量と伸びのほうです。線引きはアクセスが少ないECの分析に書きました。本記事の一例のように数百セッションが積み上がっている入口なら、RPSの桁の違いは読めます。

4. 購入する人が訪問する入口に集客を寄せる#

SNSの投稿を止める、という結論には至りません。その620セッションは、来月も同じだけ生まれます。止めればその620が消えます。やることは、入口ごとに役割を決め直すことです。

RPSが高い入口は、購入者が通っている経路です。ここへ集客を寄せます。Directの232円とGoogle検索の226円は、SNSの12円と20倍近く違います。同じ100セッションを増やすなら、どちらに増えてほしいかは決まります。

RPSが低くて量の多い入口は、認知の役割とします。SNSで商品を知った人が、その日は買わずに、後日商品名で検索して戻ってくることはあります。この場合、最後にクリックされた入口はGoogle検索です。だからSNSの売上0.7万円という数値は、SNSに価値がないことを意味しません。意味するのは、注文の入口と同じ基準でSNSを評価しないほうがいい、ということだけです。増やす入口の候補を一覧から選び直す話はEC集客の主要12チャネル比較にまとめました。こちらの記事は、すでにある入口に順番をつける側の話です。

では上位2つ、DirectとGoogle検索のどちらへ寄せるのでしょうか?

上位2入口の数字を並べたカード。DirectのRPSが232円、Google検索のRPSが226円で差は3%、検索から見込める月あたりのセッション増が+95、Directの伸びしろは見込めない。決め手が効率の差ではなく伸びしろの側にあることを示す(架空の一事例)

RPSは232円と226円で、差は3%です。100セッション増やしたときの売上の差は、600円ほどにしかなりません。どちらに寄せても結果が変わらない状態です。

決め手は表の外にありました。伸ばせる余地の大きさです。Google検索には、検索結果の4位から20位に表示されていてクリックが取れていないキーワードがあります。この一例だと、月あたり95セッション分の伸びしろが見込めます。Directを増やすなら、広告や紙のURLといった別の施策が必要で、検索の伸びしろという形では数値が立ちません。同じ僅差なら、増やし方がすでに分かっている側から手をつけます。

判断材料の置き場所を確かめると、これはデータ不足の話ではなくなります。どの商品が売れるかという答えは、モール側の注文データにもう出ています。自社ECのどの入口から訪問者が生まれたかも、自社EC側にすでに記録されています。2つは別の場所に別々に残っている状態です。欠けているのはデータではなく、自社EC側で入口と売上を結びつけて、月が変わるたびに同じ形で作り直す仕組みのほうです。

RevenueScopeの解決策

購入者を生む入口の序列は、チャネル別の内訳で確定します。RevenueScope は自社サイトに置いた1行のタグで売上を計測し、入口ごとのセッション・売上・RPSを1画面にまとめます。自動アクセスと判定した分は指標から除外し、除外した件数も開示します。SNSのセッションに自動アクセスが混ざっていた場合、それを抜いた数値で入口を比べられます。

どの入口にも紐づかなかった売上は、Unattributedという行で明示します。全体の購入売上から帰属した分を引いた残りなので、入口の一覧に出ている売上だけで全体を語らずに済みます。

入口の行を開くと、その中のキャンペーン別に売上・RPS・AOV(注文単価=1注文あたりの売上)・CVRが表示されます。SNSの中でも、リンクにパラメータを付け分けていれば、プロフィールのURLから来た分と特定の投稿から来た分は別の行になります。付け分けていない訪問は、ひとまとめの行に含まれます。

RevenueScopeをChatGPTやClaudeにつなぐと、AIが自社ECのデータを直接読んで答えてくれます。難しい設定やSQLはいりません。「うちの入口で、1セッションが一番稼いでいるのはどこ?」と聞くと、次の形で返ってきます。架空店舗Kで書き出すとこうなります。

入口セッション売上RPS
SNS6200.7万円12円
Google検索3407.7万円226円
広告2601.4万円55円
Direct1804.2万円232円
メール901.6万円180円

※ ボタンの先の画面が読んでいるのは見本ECのサンプルデータ(日々更新)です。上の表は架空店舗Kで組んだ説明用の一例(イメージ)なので、画面には別の入口名と別の金額が表示されます。

セッションの多い順に見ると先頭はSNSですが、RPSでは最下位です。上位2つのDirectとGoogle検索は232円と226円で、この表の中では差がつきません。

決め手は、別の画面にあります。Google Search Consoleをつないだサイトでは、検索から伸ばせるページを、期待できるセッションの増加分の順に表示します。対象になるのは、掲載順位が4位から20位にあって、順位を上げればクリックが増える見込みが立つキーワードです。行を開くと、そのキーワードと、目標の順位まで上げたときの月あたりの増加見込みが表示されます。粒度は入口の一覧と違い、こちらはページ単位です。入口の序列が僅差になったときに、次の一手はこの増加見込みの側で決まります。

FAQ#

よくある質問#

Q. モールをやめて自社ECに集中したほうがいいですか?

A. 順番が逆です。売れている入口を先に閉じる理由はありません。自社EC側で購入者を生んでいる入口が特定できて、そこへの集客が積み上がってから、配分を考えます。判断の材料になるのは、入口ごとのセッション数とRPSです。

Q. SNSのフォロワーは増えているのに、売上が付きません。やめるべきですか?

A. RPSが低い入口は、注文の入口ではなく認知の入口として役割を分けます。ただし1か月の母数が薄いうちは、RPSも注文1件で変わります。数十件の注文が積み上がるまでは、量と伸びで判断してください。

Q. 広告とほかの入口を、ROASで比べられますか?

A. 広告費を連携した期間なら、自社サイトで計測した売上を広告費で割ったROASを、チャネル別に算出します。広告費をつないでいない期間は、この指標は出ません。その場合はRPSで、1セッションが稼ぐ力を比べます。

Q. 商品ページの改善は、やる意味がなかったのですか?

A. 意味はあります。順番の話です。購入者が通っている入口が分かってから直すと、同じ作業が売上に届きます。CVRとAOVを同時に上げる考え方はCVRとAOVを同時に上げるにまとめました。先に入口を確かめる理由は、直した結果を受け取る母数がそこで決まるからです。

まとめ#

モールで売れている商品が自社ECで売れないとき、差は商品力ではなく入口の作りにあります。モールでは集客の入口をモールが持っていて、自社ECでは入口を自分で作ります。SNS・検索・広告・メールは、来る人の理由がそれぞれ違います。同じ商品ページに、性質の違う訪問が混ざって届きます。

背景の数値をひとつだけ。2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円で前年比5.1%増でした(経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」2025年公表)[1]。市場は伸びています。売れない理由を市場に求めるのは筋が違います。

打ち手の順番はこうです。入口ごとにセッションとRPSを出す。量の首位と稼ぐ力の首位が別なら、集客を稼ぐ力の側へ寄せる。上位2つが僅差なら、伸ばせる余地の大きい側から手をつける。商品ページの改善は、この順番のあとに置きます。

次の一手は1つです。今週は商品ページを開かず、自社ECの入口ごとに1セッションあたりの売上を出してください。そこで最下位だった入口に、これまでの集客の時間を一番使っていたなら、来月の配分はもう決まっています。

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