広告費の売上比率に、すべてのEC事業者に当てはまる正解はありません。平均は1.3%、小売業は2.0%、越境ECでは5%前後という資料があります。数値が異なるのは、調査対象と費用の範囲が異なるためです。平均の読み方と、自社の広告費・売上・ROASを使って判断する順番を整理します。
目次
この記事のまとめ#
- 広告費の売上比率に、すべてのEC事業者に当てはまる正解はありません
- 東京商工リサーチの平均1.3%と小売業2.0%は、対象企業が異なります
- Shopee Japanの3〜10%未満は、越境EC担当者109名の回答です
- 外部平均は自社の広告費率との比較に使い、増減は自社の売上比率とROASで決めます
- 売上比率とROASは分母が異なるため、両方を見て判断します
1.広告費の売上比率は調査対象で変わる#
広告費の売上比率は、費用の範囲、業種、調査対象をそろえなければ比較できません。
計算式は単純です。
広告費の売上比率 = 広告費 ÷ 売上 × 100
ただし、分子に入れる費用は資料ごとに異なります。東京商工リサーチは、広告宣伝費と販売促進費を足した金額を「宣伝費」として集計しています[1]。Web広告の出稿額だけを入れた自社の広告費率とは、費用の範囲が一致しません。
東京商工リサーチによると、2023年度に宣伝費を計上した8万7,490社の売上宣伝費比率は平均1.3%でした[1]。この数値は、宣伝費を計上した幅広い業種の企業を対象にした平均です。EC事業者だけの平均でも、Web広告だけの平均でもありません。
平均という集計方法にも注意が必要です。1.3%は全企業が目標にすべき値ではなく、対象企業の比率を平均した結果です。自社が5%だから高すぎる、1%だから少なすぎるとは、この数値だけでは判断できません。
外部資料を見るときは、次の3点を先に確認します。
- 誰を対象にした調査か
- 広告費に何を含めているか
- 平均、中央値、回答分布のどれか
この確認を飛ばすと、名称が同じ「広告費率」でも別の指標を比較することになります。まずは数値より、対象と定義を読むことが出発点です。
2.平均1.3%と小売業2.0%は同じ目安ではない#
平均1.3%と小売業2.0%は対象企業が異なるため、全体から小売だけを切り出した比較ではありません。
東京商工リサーチの記事には、2つの集計が掲載されています[1]。平均1.3%は、2023年度に宣伝費を計上した8万7,490社が対象です。小売業2.0%は、2023年度の販売費及び一般管理費の内訳が判明した26万5,253社を対象にした産業別集計です。
同じ記事に載っていても、調査対象は一致していません。1.3%を全体、2.0%をその内訳として差分を読むことはできません。広告費率を判断するときに最初に分けるべきなのは、数値ではなく調査対象です。

産業別では金融・保険業が8.2%、情報通信業が3.1%、小売業が2.0%でした。細かい業種別では、化粧品小売業が18.4%です[1]。小売業という大きな分類の中でも、商品と競争環境によって比率は大きく変わります。
化粧品小売業18.4%を、一般的なECの推奨値として使うこともできません。これは化粧品小売業という特定業種の集計結果です。反対に、小売業2.0%をすべてのEC事業者へ当てると、化粧品のように宣伝費率が高い業種を見誤ります。
業種平均が役立つのは、自社の広告費率が同業種の平均から大きく外れていないかを確認するときです。予算の増減まで業種平均だけで判断しても、次の1万円をどのチャネルへ配分するかまでは決まりません。その判断は単品通販の広告予算配分で扱っています。
3.越境ECの3〜10%未満を国内ECへそのまま使わない#
Shopee Japanの5%前後という結果は、越境EC担当者への調査であり、国内EC全体の平均ではありません。
Shopee Japanは2023年2月、越境EC事業の責任者・担当者111名を対象に調査しました[2]。売上に対する広告費の割合へ回答したのは109名です。最多は「5〜10%未満」の33.0%、次が「3〜5%未満」の23.9%でした。両者を足すと、3〜10%未満が56.9%を占めます。

この調査は「5%」という1点を答えたものではありません。最も多い回答は5〜10%未満という幅で、次の回答も3〜5%未満という幅です。10〜15%未満も18.3%あります。記事の見出しにある「5%前後」だけを抜き出すと、回答の広がりが消えてしまいます。
東京商工リサーチとShopee Japanの差は、どちらかが間違っているから生まれたものではありません。前者は企業の財務データ、後者は越境EC担当者へのインターネット調査です。対象業種、事業地域、時期、費用の聞き方が異なります。
そのため、越境ECを運営していない国内EC事業者が、5%を相場として採用する根拠にはなりません。越境ECでも、回答の内訳は自社の広告費率と比べる参考になります。自社の適正予算を決めるには、広告費と自社サイトで生まれた売上を結び付けて確認する必要があります。
4.外部平均を参考に自社の広告費・売上・ROASで判断する#
予算を増減する判断は、外部平均ではなく、自社の売上比率と売上ベースROASで行います。
広告費の売上比率は、会社全体の売上に対して広告へいくら使ったかを表します。ROASは、広告費に対して売上が何倍になったかを表します。RevenueScopeでは、広告プラットフォームに対応するチャネルの計測売上を分子にします。
広告費の売上比率 = 広告費 ÷ 全体売上 × 100
ROAS = 対応するチャネルの計測売上 ÷ 広告費
例えば、月商1,000万円、広告費50万円なら売上比率は5%です。広告プラットフォームに対応するチャネルの計測売上が200万円なら、ROASは4.0倍になります。5%と4.0倍は矛盾しません。前者の分母は全体売上、後者の分子は対応チャネルの計測売上だからです。この例は計算関係を示すための架空の一事例です。

確認する順番は3段階です。
- 外部資料の調査対象と費用範囲を確認する
- 自社の広告費を全体売上で割り、広告費率を確認する
- 広告プラットフォーム別の売上ベースROASを出し、回収効率を確認する
全体の広告費率が平均に近くても、回収効率が低いチャネルへ偏っていれば増額の根拠にはなりません。反対に、平均より高くても、売上ベースROASが高いチャネルで回収できている場合があります。広告媒体の申告値と自社計測の差は媒体ROASと自社ROASの違いで整理しています。
広告費率の計算自体は簡単です。しかし、複数媒体の広告費と、自社サイトで生まれた売上を同じ期間で繰り返し集計する作業は重くなります。外部平均は一度調べれば済みますが、自社のROASは予算と売上が変わるたびに更新が必要です。
RevenueScopeの解決策
RevenueScopeは、広告費と自社サイトで計測した売上から、売上ベースROASを表示します。
広告費は、年・月・チャネルを指定してフォームから登録できます。CSVによる一括取り込みにも対応しています。広告費を登録した期間は、サイト全体と広告プラットフォーム別にROASを確認できます。分子は広告媒体の申告売上ではなく、RevenueScopeが自社サイトで計測した売上です。
架空のECサイトにおける表示例
| 表示区分 | 広告費 | 売上 | ROAS | RPS |
|---|---|---|---|---|
| Meta(広告プラットフォーム) | 80,000円 | 96,000円 | 1.20倍 | — |
| ┗ Instagram(チャネル) | — | 72,000円 | — | 90円 |
| ┗ Facebook(チャネル) | — | 24,000円 | — | 120円 |
※上の表は説明用に作った架空の一事例です。見本ECのサンプルデータとは異なります。広告プラットフォームの売上には、対応するチャネルの売上を合算しています。配下チャネルのオーガニック流入も含むため、広告だけが生んだ売上とは限りません。
広告プラットフォーム単位では、広告費・売上・ROASを表示します。配下のチャネルでは、売上とRPSを確認できます。ここでのRPSは、配下チャネルの売上をセッション数で割った値です。この分け方により、広告費の登録単位と、訪問が記録されるチャネル単位が異なる場合にも、それぞれの役割を混同せず確認できます。
広告費を登録していない期間は、ROASを0として表示しません。広告費が0円より大きければ、売上が0円の期間もROASは0倍と算出します。RevenueScopeは、売上・広告費・ROAS・RPSを使った広告配分の判断に対応しています。
外部平均との比較で分かるのは、同業種の平均と自社の広告費率との差までです。RevenueScopeで自社の実測値を確認すれば、広告プラットフォームごとの売上ベースROASと、配下チャネルの売上・RPSを確認できます。広告予算の配分をAIに聞く方法では、実測データから配分案を作る流れも紹介しています。
FAQ#
よくある質問#
Q. 売上の1.3%を広告費の目安にすればよいですか?
A. 1.3%は、東京商工リサーチが2023年度に宣伝費を計上した8万7,490社から求めた平均です。ECだけの平均ではなく、宣伝費には広告宣伝費と販売促進費が含まれます。自社予算の上限ではなく、外部の参考値として使います。
Q. 小売業なら売上の2%が適正ですか?
A. 2.0%は、販売費及び一般管理費の内訳が判明した26万5,253社を対象にした産業別集計です。同じ資料でも、化粧品小売業は18.4%でした。小売業の中でも差が大きいため、2%だけで適正とは判断できません。
Q. ECの広告費は売上の5%が相場ですか?
A. Shopee Japanの「5%前後」は、越境EC事業の責任者・担当者への調査です。広告費の割合について回答した109名では、5〜10%未満が33.0%、3〜5%未満が23.9%でした。国内EC全体の平均ではありません。
Q. 広告費の売上比率とROASの違いは何ですか?
A. 売上比率は、広告費を全体売上で割った比率です。RevenueScopeのROASは、広告プラットフォームに対応するチャネルの計測売上を広告費で割った回収効率です。分母と分子が異なるため、広告費の売上比率が同じEC事業者でもROASは変わります。ROASの基本はROASとはで確認できます。
Q. RevenueScopeへ広告費を登録する方法は?
A. 年・月・チャネルを選ぶフォーム入力と、CSVによる一括取り込みを使えます。広告費を登録した期間だけ、自社サイトで計測した売上を分子にしたROASを表示します。
まとめ#
広告費を売上の何%にするかは、1つの平均では決まりません。東京商工リサーチの平均1.3%は、宣伝費を計上した8万7,490社が対象です。小売業2.0%は、別の26万5,253社を対象にした産業別集計です。Shopee Japanの3〜10%未満に回答が集まった調査も、越境EC担当者109名に限られます。
外部平均は、自社の広告費率が同業種の平均から大きく外れていないかを確認するために使います。予算を増やすか減らすかは、自社の広告費を全体売上で割った比率と、広告プラットフォームに対応するチャネルの計測売上から求めたROASを使って決めます。対象と定義が異なる平均を混ぜず、自社の実測値を最後の判断基準にしてください。
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