新しくEC集客に予算を割くとき、SEOと広告のどちらに先に張るべきか——ここは誰もが迷うところです。結論から先に言うと、二択で「どちらか」を選ぶより、1セッションが生む売上(RPS)という同じ物差しで両者の稼ぐ力を比べ、資金余力と即効性で投資の順番を決めるのが現実的です。
なぜ二択で考えないほうがいいのか?それは、SEOと広告では時間とお金の性質が逆で、一時点の売上だけを見比べると立ち上がり途中のSEOを不当に低く評価してしまうからです。集客チャネル全体をまず俯瞰したい人はECの集客チャネルを売上で比べるから入るとつかみやすいですが、この記事はその先——SEOと広告に絞って、先に張る順番をどう決めるかを追います。
目次
この記事のまとめ#
- SEOと広告は時間とお金の性質が逆です。広告は今日から効くが止めれば止まる費用、SEOは効くまで数週間〜数か月かかるが一度乗れば積み上がる資産です。だから同じ瞬間の売上だけで比べると、立ち上がり途中のSEOを低く見てしまいます。
- 同じ土俵で比べられるのは、稼ぐ力=RPS(1セッションが生む売上)です。総額や件数で比べると規模の大きいチャネルが有利に見えるだけで、RPSで正規化すると「1回の訪問がいくら稼ぐか」だけを純粋に見比べられます。
- 判断は2段です。まずRPSで稼ぐ力を比べ、そのうえで広告側にだけ費用のレンズ(ROAS)を重ねます。どちらに先に張るかは、今月の売上が要るか、成果を待てる資金余力があるか、RPSでどちらが上か、の順で決めます。
1. SEOと広告は「時間とお金の性質」が逆#
まず押さえたいのは、広告は「即効だが払い続ける費用」、SEOは「遅効だが積み上がる資産」という、時間とお金の向きが正反対だという点です。
広告(リスティング広告)は、出稿すると審査を通ったその日からクリックが生まれます[2]。効果は速いのですが、費用は毎月かかり続け、支払いを止めれば流入もほぼゼロに戻ります。払った分だけ露出する、蛇口のような仕組みです。
一方でSEOは、記事や商品ページが検索で評価されて上位に乗るまで、数週間から数か月かかります。Googleも、施策の効果が検索結果に反映されるには時間がかかると案内しています[1]。ただ、一度上位に乗れば追加の出稿費なしで流入が積み上がり、過去に書いたページが資産として効き続けます。自然検索が売上にどう効いてくるかは自然検索の売上貢献を測るで別に整理しています。

上の図は、累積の売上をイメージで描いたものです。広告は初月から一定ペースで直線的に伸びます。SEOは最初ほぼ横ばいで、後半に加速し、この例では11か月あたりで広告を追い越します。ここで大事なのは、この2本を「今どちらが上か」という一時点のスナップショットで比べると、まだ横ばいの時期にあるSEOを不当に低く見てしまうことです。時間軸が逆な2つを同じ瞬間で切って比べても、噛み合いません。だから、比べる物差しのほうを変える必要があります。
2. 同じ物差し=RPSで見ると初めて比べられる#
時間軸が逆でも公平に比べられる物差しが、RPS(Revenue Per Session=1セッションが生む売上)です。RPSで見ると、SEOと広告を同じ土俵で「稼ぐ力」だけ比較できます。
RPSは、売上をセッション数で割った数字です(詳しくはRPSとは何かをやさしく解説で扱っています)。総額や件数で比べると、規模の大きいチャネルがそれだけで有利に見えてしまいます。RPSは1セッションあたりに正規化するので、規模の差を消して「1回の訪問がいくら稼ぐか」だけを純粋に比べられます。なお、この記事で「自然検索」と呼ぶのは、Google検索やYahoo!検索といった検索エンジン経由の、広告ではない流入のことです。分析ツールの画面ではふつう検索エンジンごとに分かれて出るので、以降の図では代表してGoogle検索で示しています。

上の図はイメージですが、自然検索のRPSが広告を上回る、という並びは実際によく起きます。購入意欲があって自分から調べて来る自然検索の訪問は、割り込みで見せる広告よりも、1回あたりでよく売れることがあるからです。
ここで注意したいのは、RPSは「稼ぐ力」であって「費用対効果」ではない、という点です。広告には広告費という分かりやすいコストがあり、ROAS(広告費に対して何倍売れたかの倍率・ROASとはで解説)で費用対効果まで見えます。一方、検索の標準ツールが出すのは表示回数・掲載順位・クリックまでで、そのセッションがいくら売ったかは出てきません[3]。SEO側にかかる記事制作の手間も、アクセス解析の外にあります。だから同じ物差しで正直に比べられるのは稼ぐ力=RPSまでで、費用のレンズ(ROAS)は広告側にだけ後から重ねられる、という非対称があります。判断は2段——まずRPSで稼ぐ力を並べ、そのうえで広告の採算をROASで確かめる、と分けて考えると噛み合います。
3. どっちに先に張るか——資金余力と即効性で決める#
先に張る相手は、二択で切るより投資の順番で決めます。決め方の芯は、今月の売上が要るか、成果を待てる資金余力があるか、そしてRPSでどちらが稼いでいるか、の順です。

上の図の流れで見ていきます。まず問うのは、今月から売上が要るかどうかです。要るなら、初日から流入が立つ広告から始めます。採算はROASで管理しながら回します。広告の中でどのチャネルから始めるかは最初に張る広告チャネルをRPSで選ぶで具体的に扱っています。
すぐの売上が必須でないなら、次に資金余力を問います。成果が出るまで半年以上待てる余力が苦しいなら、広告とSEOを並走させます。広告で今の売上を確保しつつ、広告費の1〜2割を記事制作に回してSEO資産を育てる形です。片方を切らずに、収入と資産を同時に積みます。
待てる余力があるなら、最後にRPSで判定します。Google検索のRPSが広告のRPSを上回っているなら、SEOへ投資をシフトします。1セッションあたりで既に勝っていて、しかも積み上がる資産だからです。まだ下回るなら、広告を軸に続けながらSEOを仕込みます。どの分岐に転んでも、判断の芯はRPSです。稼ぐ力を数字で見てから、資金余力と即効性で順番を決めます。
RevenueScopeの解決策
ここまでの判断でぶつかるのは、いつも同じ壁です。稼ぐ力を比べるには流入元ごとのRPSを並べ、広告チャネルにはROASも重ねたい。ところが標準ツールでは、クリックまでしか出ない検索データと、広告側のROASを、毎回チャネルをまたいで手作業で突き合わせ直すことになります。
RevenueScope は、この突き合わせを解決します。流入元ごとのセッション・売上・RPSを1画面に表示し、広告チャネルには広告費を取り込めばROASも重ねて表示します。下は化粧品ECを想定したデモデータでの並びの例です。
| 流入元 | セッション | 売上 | RPS | ROAS |
|---|---|---|---|---|
| Google検索 | 12,400 | 1,760,800円 | 142円 | ー |
| Google広告 | 8,600 | 1,014,800円 | 118円 | 320% |
| その他(SNS・直接など) | 9,800 | 725,200円 | 74円 | ー |
イメージ。数値はサンプルデータのフィクションサイト(化粧品EC)による一事例です。
この例では、Google検索のRPSが142円で、Google広告の118円を約1.2倍上回っています。同時に、広告はROAS320%で採算が合っています。つまり二択で切る話ではなく、稼ぐ力で勝っているGoogle検索に投資を寄せつつ、広告は採算が合ううちは続ける、という投資順序がそのまま見えてきます。Google検索は広告費がないためROAS欄はーですが、稼ぐ力=RPSはそろえて比べられます。次の一手として、アトリビューションモデル(ラストクリック/ファーストクリック/均等配分/時間減衰)を切り替えれば、売上がどのチャネルに寄るかの見え方も試せます。実際の並び替え画面はデモ画面で確認できます。
FAQ#
よくある質問#
Q. SEOと広告、結局どちらが得ですか?
A. 一時点の売上だけで得か損かを比べると、立ち上がり途中のSEOを低く見てしまいます。稼ぐ力(RPS)で並べ、資金余力と即効性で「先に張る順番」を決めるのが現実的です。今月の売上が要るなら広告、待てる余力があってRPSでSEOが上回るならSEOへ、という順で考えてください。
Q. RPSとROASはどう使い分けますか?
A. RPSは「1セッションがいくら売るか」=稼ぐ力で、SEOと広告を同じ物差しで並べられます。ROASは「広告費に対して何倍売れたか」=費用対効果で、広告費のある広告側にだけ重ねられます。まずRPSで稼ぐ力を比べ、そのうえで広告の採算をROASで確かめる、と段を分けて使います。
Q. 広告費を止めたら、SEOだけで回りますか?
A. すぐには回りません。SEOは効果が出るまで数週間〜数か月かかり、その間の流入はまだ積み上がっている途中です。広告で今の売上を確保しながら、広告費の一部を記事制作に回してSEO資産を育てると、追い越しの時期を早められます。片方を急に切るより、並走させて資産を育てる期間を挟むほうが安全です。
まとめ#
SEOと広告は、時間とお金の性質が逆です。広告は即効だが払い続ける費用、SEOは遅効だが積み上がる資産。だから同じ瞬間の売上だけで比べると、立ち上がり途中のSEOを不当に低く見ます。公平に比べられるのは、稼ぐ力=RPS(1セッションが生む売上)です。
判断は2段でした。まずRPSで稼ぐ力を並べ、そのうえで広告側にだけ費用のレンズ(ROAS)を重ねる。どちらに先に張るかは、今月の売上が要るか、成果を待てる資金余力があるか、RPSでどちらが上か、の順で決めます。まずは自然検索と広告のRPSを並べて、稼ぐ力で比べるところから始めてみてください。二択の勘ではなく、同じ物差しの数字で投資の順番が決まります。
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