順位チェックツールを使っているけれど、これは大丈夫なのか。2026年7月、米国の裁判所がGoogleとSerpApiの訴訟で1つの判断を示しました。ただし、EC運営で実際に問題になるのは適法性ではありません。その数値が推定なのか実測なのか、という区別のほうです。
目次
この記事のまとめ#
- 2026年7月、米国の連邦裁判所がGoogleの著作権法にもとづく2件の主張を退けました。著作権物を含まない検索結果については、保護される著作物が無いので回避には当たらない、という判断です
- ただし2件の中身は違います。著作権物を含まない分は修正の機会なく終わり、ライセンス画像を含む分は修正して再提出できる形で残っています。訴訟は続いており、米国の判断なので日本のEC事業者に直接の効力もありません
- 実務で見るべきは適法性より数え方です。順位チェックツールの数値は外部から取得した検索結果、つまり取得時点の推定。自社のGoogle Search Consoleは自サイトの実測
- 2つが一致しないのは異常ではなく設計です。瞬間と期間、外からの観測と内側の記録。ずれるのが仕様どおりの動きです
- 使い分けの基準ははっきりしています。競合の動きを見るなら外部データ、自社の集客と売上を判断するならGoogle Search Consoleの実測
1. 何が起きたのか|SerpApi判決を整理#
米国の連邦裁判所が2026年7月、Googleが検索結果データの提供事業者SerpApiに対して起こした訴訟で判断を示しました[1]。著作権法(DMCA)にもとづく2件の主張は、いずれも退けられています。担当したのはYvonne Gonzalez Rogers首席判事です。争点は、公開されている検索結果へのアクセス遮断を回避した行為が、著作権法の禁じる技術的保護手段の回避に当たるかどうかでした。
ただし2件の中身は違います。1件目は著作権物を含まない検索結果に関する主張で、保護される著作物が無いので回避には当たらない、と判断されました。修正の機会は与えられておらず、この部分は事実上そこで終わりです。2件目はライセンスを受けた画像を含む分で、こちらも棄却されましたが、修正して再提出する許可がついています。理由は、著作権者の許諾を得てアクセス遮断の仕組みを使っていることを、Googleが示せなかったためです[1]。
終わった部分と、まだ終わっていない部分#
気をつけたいのは、この判断が届く範囲です。著作権物を含まない分は修正の機会なく退けられ、片方はそこで完全に終わりました。検索結果に表示される情報パネル(Knowledge Panel)の画像を含む分は、修正して再提出できる形で残っています[1]。Googleには21日間の修正期限があり、その間は証拠開示の手続きも止まっています[1]。訴訟そのものは続いています。
「スクレイピングが合法になった」とも「Googleが敗訴した」とも読めない、ということです。著作権法の枠組みで扱える範囲がここまで、という整理がついた段階です。
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日本のEC事業者に直接の効力はない#
そしてこれは米国の裁判所の判断であり、日本のEC事業者に直接の効力はありません。日本で順位チェックツールを使い続けるかどうかを考えるなら、見るべきは判決の行方ではありません。契約しているツールの利用規約と、そのツールがデータの出どころをどう開示しているか。読むならこちらが直接の判断材料になります。
そのうえで、実務で判断が変わるのは次の点です。自分が毎月見ている順位の数値が、どこから来ているのか。ここから先はその話になります。
2. 順位チェックツールのデータはどこから来るのか#
順位チェックツールが表示しているのは、そのツールが検索結果を取得した時点のスナップショットです。
一般に、順位チェックツールや競合分析ツールは、公開されている検索結果のページを外部から取得して数値にしています。読者のサイトにタグを入れて測っているわけではありません。自社サイトの外側から、検索結果という公開された画面を見に行っている。今回の訴訟でアクセス遮断の措置を回避した点が争点になったのも、この取得の部分です。
数値には必ず「いつ・どの条件で」が付く#
外から取得している以上、数値には取得の条件が付いてまわります。取得した時刻、地域、端末。この組み合わせが変われば、同じキーワードでも順位は違って出ます。Googleの検索結果は場所や端末によって変わると案内されており[3]、取得のたびに同じ並びが返るとは限りません。
取得の頻度も毎日とは限りません。対象キーワードが多いほど、一周するのに時間がかかります。画面に出ている「7位」は、今この瞬間の7位ではなく、最後に取得した時点の7位。小さな違いに見えますが、週次でレポートを出すときに差になります。
どのツールを選ぶかという話は売上で選ぶ順位チェックツールの基準にまとめました。ここで押さえたいのは選び方ではなく、どのツールであっても数値の作られ方は同じ構造だという点です。
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「どう作られた数値か」への関心は現場に既にある#
外部ツールの費用を見直す動きの中で、生成AIに検索させて自作で代替できないかを試す実務者も出てきました。興味深いのは、その報告に返ってくる指摘のほうです。AIはキーワードも検索ボリュームもそれらしく作り出してしまい、実数とはまるで違う。置き換えられたのは候補を見つける層で、積み上げてきた集計の層は失われている。
こうした会話が成り立つこと自体が、「その数値はどう作られたのか」という問いが既に現場にあることを示しています。判決のニュースは、この問いを改めて意識させる材料です。
3. 推定のデータと実測のデータ、どちらで判断するか#
競合の動きを見るなら外部データ、自社の集客と売上を判断するならGoogle Search Consoleの実測です。
自社のGoogle Search Consoleに入っている数値は、外から観測した推定ではありません。Google検索で自サイトが何回表示され、何回クリックされたかという記録です[2]。掲載順位も、自サイトが表示されたときの平均として計算されます。外部ツールが見ているのが検索結果の画面なら、こちらはGoogle側に残った自サイトの実績。測っている対象がそもそも違います。
一致しないのは異常ではなく設計#
外部ツールの順位とGoogle Search Consoleの平均掲載順位がずれても、どちらかが壊れているわけではありません。前者は「その瞬間、その条件で検索したときの位置」、後者は「その期間に実際に表示されたときの平均」。瞬間と期間、外からの観測と内側の記録。合うほうがむしろ不自然です。
避けたいのは、この2つを1つの表に混ぜて差の理由を追いかけること。順位は3位なのにクリックが来ない。この状況も、外部ツールの順位ではなくGoogle Search Console側の表示回数とクリックで見るほうが早く解決します。詳しくは順位が上がってもクリックが来ないときにまとめました。GA4とGoogle Search Consoleのずれは、これとはまた別のペアの話になります(GA4とGSCで検索キーワードの数字が合わない理由)。
外部データが要らないわけではない#
外部データが不要になるわけではありません。外部ツールを使い続ける一番の理由として実務者が挙げるのは、競合の情報です。そしてこれは、自社のGoogle Search Consoleには構造的に映りません。Google Search Consoleが持っているのは自サイトが表示されたキーワードの記録だけで、競合が獲得しているキーワードは記録の外にあるからです。取れた競合キーワードの使い道は競合キーワードのギャップの見方で扱っています。
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使い分けの基準#
使い分けの基準は単純です。競合の位置と獲得キーワードは外部データで見て、取得時点つきの推定として扱う。自社の集客量と売上はGoogle Search Consoleの実測と、自社サイト側の記録で見る。この基準を持っていれば、数値が合わないたびに理由を調べ直す作業が減ります。外注先から届くレポートを読むときも同じで、どちらのデータかを先に確かめます(SEO業者レポートの検収)。
自社側の確認は、Google Search Consoleの検索パフォーマンスレポートから始まります。キーワード別の表示回数とクリックを、期間ごとに見る[4]。ただし、この画面だけでは足りない部分があります。競合が獲得しているキーワードはここに映りません。キーワードと売上もつながりません。キーワードの一覧には件数の少ないものが除かれる仕組みがあり[4]、売上の数値は別の画面にあります。毎月、キーワード別のクリックと着地ページごとの売上を手で突き合わせる。この反復が、続かなくなる理由です。
RevenueScopeの解決策
RevenueScopeは外部データの数値と自社の実測値を、別々の数値として表示します。
競合側は、競合ドメイン(最大4件)がGoogle日本語検索で獲得しているキーワードと、その順位、月間検索数を、取得日時つきのスナップショットとして表示します。前回の調査と比べた順位の変化と、消えたキーワードもあわせて表示します。外部の検索結果から取得したデータなので、性質は推定です。取得した時刻を必ず添えて返します。
自社側は、Google Search Consoleの実測クリックと、そのキーワードが着地したページ、検索経由の推定売上を表示します。推定売上は、セッションあたり売上(RPS)に実測クリックを掛けた保守的な試算です。起点は自サイトに残った記録のほう。この2つはそれぞれの性質を保ったまま同じ画面にあり、外部データには取得時刻が、自社の実測には日付が付いて残ります。
出どころと性質を分けて返す#
「競合の獲得キーワードと、うちの検索実績を出して」と尋ねると、次のような形で返ってきます。
| 見る対象 | 出どころ | 性質 | 数値 |
|---|---|---|---|
| 競合3社の獲得キーワード | 外部の検索結果 | 推定 | 412件 |
| うち1ページ目 | 外部の検索結果 | 推定 | 96件 |
| 自社の検索クリック | Google Search Console | 実測 | 前月比 +12.4% |
| 検索経由の推定売上 | Google Search Console + 自社売上 | 推定 | 全体の18.6% |
※ 一事例(イメージ・直近30日)
競合側の行には、取得した時刻が添えて返ります。この事例なら2026年7月24日10時12分の時点で、その後の順位変動は次の調査まで反映されません。一方の自社側は日付つきで積み上がり、後から書き換わりません。同じ画面にありながら、どちらの数値をどの判断に使うかを取り違えずに済みます。
競合側で上位を取られているキーワードのうち、自社の実測クリックがゼロのものが見つかれば、そこが記事を1本足す候補です。
FAQ#
よくある質問#
Q. 順位チェックツールを使い続けても大丈夫ですか?
A. 今回退けられたのは著作権法にもとづく2件の主張ですが、ライセンス画像を含む分は修正して再提出できる形で残っており、訴訟そのものは続いています[1]。米国の裁判所の判断なので、日本のEC事業者に直接の効力もありません。判決の行方を追うより、契約しているツールの利用規約と、データの出どころをどう開示しているかを確かめるほうが、実務の判断には直接つながります。
Q. 外部ツールの順位とGoogle Search Consoleの掲載順位が違うのはなぜですか?
A. 測っているものが違うためです。外部ツールが返すのは、そのツールが検索した瞬間の位置。Google Search Consoleが返すのは、その期間に自サイトが実際に表示されたときの平均です[2]。取得の時刻や場所、端末が変われば順位は変わりますし、期間の平均には表示回数の重みがつきます。差は設計から出るもので、故障ではありません。
Q. 社内の報告にはどちらの数値を使えばいいですか?
A. 目的で分けてください。競合の位置や獲得キーワードの話なら外部データ、自社の集客量と売上の話ならGoogle Search Consoleの実測です。1つの表に混ぜると、報告の場が「なぜ数字が合わないのか」の説明で埋まります。分けたうえで、どちらの数値かを明記するだけで話が早くなります。
Q. AIに検索させて自作すれば、外部ツールは不要になりますか?
A. 候補を見つける作業の一部は置き換えられますが、数値そのものは別の問題です。生成AIはキーワードも検索ボリュームもそれらしく作り出すことがあり、実測とは違います。過去から積み上げてきた時系列の記録も引き継げません。自作を検討するなら、出てきた数値がどこから来たものかを先に確かめてください。
まとめ#
順位チェックツールが違法になったわけでも、適法だと認められたわけでもありません。2026年7月に退けられたのは著作権法にもとづく2件の主張で、うち1件は修正して再提出できる形で残っています[1]。訴訟は続いており、米国の判断なので日本のEC事業者に直接の効力もありません。
実務の判断が変わるとすれば、適法性ではなく数え方のほうです。外部ツールの数値は、そのツールが検索結果を取得した時点の推定。自社のGoogle Search Consoleは、Google側に残った自サイトの実測。両者が一致しないのは、測っているものが違うからです。
だから、外部の数値でクリックの増減を語らず、自社の実測で競合の順位を語らない。競合の動きは外部データで追い、自社の集客と売上はGoogle Search Consoleの実測で判断する。今月のレポートから、それぞれの数値に出どころを書き添えてみてください。
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