「GA4のeコマースイベントは入れたんですけど、結局どこで離脱しているか分からないんです」。設定はできたけれど 数値を読んで改善に繋げる手前で止まる EC事業者から、最も多く受け取る相談です。
本記事は GA4 で商品閲覧から購入完了までの離脱を段階別に見える化し、どの段階を優先改善すべきか判断する手順を、設定HOW・数値解釈WHY・改善施策ACTIONの3段構成で整理します。
この記事のまとめ#
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ファネル分析は5段階で組む
商品閲覧→カート投入→チェックアウト開始→決済情報入力→購入完了で離脱率を見える化する[1]
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数値は「業種比較」 と「段階比較」 の2軸で読む
絶対値ではなく業種典型値との差分と段階間ドロップ率の偏りで異常段階を特定する[2]
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改善施策は段階ごとに異なる
閲覧→カートはLP訴求、カート→決済は送料・在庫、決済→完了はフォーム長と決済手段が原因になる
1. ファネル分析とは — 5段階で組む基本構造#
EC のファネル分析は 購入までの離脱段階を可視化する 手法です。GA4 の標準eコマースイベントを使えば、追加実装ゼロで以下5段階を観測できます。

view_item (商品閲覧) → add_to_cart (カート投入) → begin_checkout (チェックアウト開始) → add_payment_info (決済情報入力) → purchase (購入完了) の5段階です。各段階の通過率を計算するとサイト全体のCVRが「どこで落ちているか」 段階別に分解できます。
CVR 1.5% のサイトで view_item→add_to_cart が 8%・add_to_cart→purchase が 18% なら最初の段階で大きく漏れている、と判断できる。CVR単体で見ると「全体的に低い」 としか分からず施策が散らばりますが、段階で切れば直すべき箇所が特定できます。
セッション単位の売上効率を見たい場合は RPS (Revenue Per Session・セッション当たり売上・国内では未定着の指標) を併用すると判断が立体的になります (RPS完全ガイド)。
2. GA4で設定する5ステップ#
GA4 のeコマース設定が済んでいれば、ファネル分析は 探索レポートで5分 で構築できます。設定後の売上分析全体の流れは Shopify×GA4で本当に見るべき指標 を参照。

ステップ1: eコマースイベントの実装確認#
GA4「リアルタイム」 で view_item・add_to_cart・begin_checkout・purchase の4イベント発火を確認。Shopify標準連携は自動、カスタムテーマは未発火ありです (GA4eコマース設定チェックリスト)。
ステップ2: 探索レポートで新規ファネル作成#
GA4「探索」 → 「+」 → 「目標到達プロセスデータ探索」。空キャンバスから組むほうがカスタマイズの自由度が高い。
ステップ3: 5段階のステップ条件を定義#
各ステップに「イベント名 = view_item」 を設定。「次のステップは間接的に続行」 を選ぶと複数セッションをまたいだ離脱率も計測できます。EC は検討期間が長いため間接的に続行が標準です。
ステップ4: セグメント・期間・比較を設定#
新規/リピート別・デバイス別・チャネル別のセグメントを追加。期間は 直近28日と前28日の比較 が標準です。
ステップ5: dashboard 共有#
完成ファネルを「共有」 でチームに渡す。週次定例で同じファネルを開く運用にすると改善追跡が継続します。
3. ファネル数値の読み方 — 業種別の典型値#
各段階の通過率は 業種で典型値が大きく異なる ため、絶対値ではなく業種典型値との差分で読みます。

アパレルは view_item→add_to_cart が 5-8% と低め ですが、ブラウジング行動が多いため異常ではありません。一方、食品EC は 12-18% と高め — 必要に迫られた来訪が多いためです。
「自社の通過率 6% でLPを改善する」 と判断する前に、業種典型値が 5-8% なら現状維持の判断もありえる、と意識する。改善余地が大きいのは典型値より明らかに低い段階だけです。
ファネル段階の数値だけでなく、最終的な CVR と AOV (客単価) を併せて見ると改善の優先順位が決まります (購入率と客単価を同時に上げる方法)。
4. 段階別の改善施策#
「どこが異常か」 が見えたら、段階別に施策を切り分けます。段階を間違えると施策コストが無駄になる ため、原因と施策のマッピングが重要です。

view_item→add_to_cart の漏れ は商品ページの訴求問題。商品画像・価格表示・レビュー件数・在庫表記が影響します。LP訴求変更で数値が動きやすく A/Bテスト効果が出やすい段階です。
add_to_cart→begin_checkout の漏れ は送料・在庫切れ・会員登録強制の問題。送料無料閾値の調整・ゲストチェックアウト導入が定石施策です。
begin_checkout→purchase の漏れ はフォーム長・決済手段不足の問題。フォーム項目削減・Apple Pay / Amazon Pay 追加が効果的です。
施策実行後の購入完了ユーザーの 客単価 (AOV) を併せて見ると総合効果が把握できます (AOV完全ガイド)。
まとめ#
ファネル分析で「どの段階が漏れているか」 が見えたら、次は どのチャネル経由の客層で漏れているか に踏み込みます。GA4 セグメントでチャネル別通過率を比較し、効率の悪いチャネルの広告投資効率は ROAS で判断します (ROAS完全ガイド)。
よくある質問#
Q1: 探索レポートとリアルタイムレポートで数値が違います#
探索レポートは 24-48時間遅延 が標準仕様で別系統データです。月次判断は翌月3日目以降、日次は前日分を見ます。
Q2: 「次のステップは間接的に続行」 と「直接続行」 の違いは?#
「直接続行」 は同一セッション内のみ、「間接的に続行」 は 複数セッションをまたいだ離脱率 を計測します。EC は「カート保留→翌日購入」 が多いため、間接的に続行を選びます。
Q3: 業種別の典型値はどこで確認できますか?#
国内ECの業種別ファネル通過率データは限定的です。本記事の典型値は海外ベンチマーク (Baymard・Statista 等) と公開ECデータの参考値で、自社数値とは差が出る前提で扱ってください。
関連記事#
- Shopify×GA4で本当に見るべき指標 — 設定後の売上分析4ステップ
- GA4eコマース設定を30分で終わらせるチェックリスト — Shopify編
- 購入率と客単価を同時に上げる方法 — CVRとAOVの併用ガイド
- ROAS完全ガイド — 損益分岐点と業種別目安
- RPS完全ガイド — セッション当たり売上で広告判断を変える
参考文献#
[1] Google 「Recommended events for GA4」 2026年版
[2] Baymard Institute 「50 Cart Abandonment Rate Statistics 2026」 2025年9月
[3] 経済産業省 「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」 2025年8月
[4] Adobe Digital Insights 「Digital Economy Index」 2026年版

