ChatGPTやGeminiからの流入が、前より増えてきた。これを見て「うちのAI向けの施策が効いた」と考えるのは、じつは早すぎます。近ごろの研究では、AI流入の伸びの多くがプラットフォームそのものの成長で説明でき、施策が生んだ効果はずっと小さいことが議論されています。つまり、見出しに出る大きな倍率は、施策の因果を実際より大きく見せてしまう。となると、増えた流入のうち「本当に自分の施策が生んだぶん」はどう見分ければいいのでしょうか。本記事では、なぜ流入が増えても効いたとは言えないのか、なぜ生の倍率は効果を過大に見せるのか、そして本物の増分を見分ける2つの見方を、順番に整理します。
まとめ解説動画
この記事のまとめ#
- AI流入が増えても、それだけで「施策が効いた」とは言えません。伸びの多くはAI自体が広まった成長分で、施策の効果はずっと小さい、という議論が近ごろの研究で出ています
- 生の倍率(前と比べて何倍になったか)は、成長分と効果分が混ざっているため、施策の因果を大きく見せすぎます
- 本物の増分は、施策を打っていないページとの差分で見るのがひとつ。もうひとつは、増えた流入が実際に買っているか(訪問あたりの売上)で見ることです
- ただしGA4の素の数字も、botの混入や「どこから来たか不明」への紛れで歪みます。AI経由を切り分け、売上までそろえて見ないと、本物の増分は見えてきません
1. 増えた=効いた、とは限らない#
結論から言うと、AI流入が増えても、それだけでは「自分の施策が効いた」とは言えません。AIそのものが世の中に広まった成長分が、伸びの大半を占めていることがあるからです。
最近、ChatGPTやGeminiを使う人が一気に増えました。すると、特に何もしていなくても、AI経由でサイトに来る人は自然と増えていきます。これは「上げ潮がすべての船を持ち上げる」ような話で、潮が満ちれば、何もしていない船も浮き上がります。だから「AI流入が増えた」という事実だけでは、それが自分の施策のおかげなのか、それともただ潮が満ちただけなのかは、区別がつきません。
ここで「AI向けの施策」とは何かを一言で補っておきます。AIに自社が引用・紹介されやすくするための取り組み(研究では"AEO"=Answer Engine Optimization、答えるAI向けの最適化と呼びます)のことです。ページの書き方を整えたり、引用されやすい情報を載せたりする工夫を指します。
ここで一つ、はっきり断っておきます。この話のもとになった研究の一つが、『答えるAI向けの最適化と、プラットフォームの成長を切り分ける――ChatGPT流入のログにもとづく自然実験』(原題 "Disentangling Answer Engine Optimization from Platform Growth: A Log-Based Natural Experiment on ChatGPT Referral Traffic")という研究です。あるサイトのアクセス記録を使い、施策を打ったページと打っていないページを比べて、施策の効果だけを取り出そうとしました[1]。題材は知識を共有するサイト(glasp.co)ですが、「流入の伸びには成長分と効果分が混ざる」という骨組みは、ECサイトやサービスサイトなど、AIから流入を得るどんなサイトにも当てはまると考えられます。ただし数値そのものはこのサイトの話なので、本記事ではすべて目安として見てください。この研究はまだ査読前のものなので、「研究で証明された」と受け取らず、こういう議論が出ている、という参考にとどめてください。実際の効き方は、自分のサイトのデータで確かめるのが正確です。
2. なぜ生の倍率は効果を過大に見せるのか#
結論から言うと、前と比べて何倍になったかという「生の倍率」は、AI自体の成長分と、自分の施策の効果分が混ざっているため、施策の力を実際より大きく見せてしまいます。
さきほどの研究では、この切り分けがはっきり数字で出ています。研究では、ChatGPTからの流入全体は約5.7倍に増えていた、という結果が報告されています。ところが、施策を打っていないページだけを見ても、約3.5倍に増えていた。つまり、何もしていないページでも3.5倍になっていたわけです。この3.5倍ぶんは、施策とは関係のない、AI自体が広まった成長分です。そして、施策を打ったページと打っていないページの差から取り出した、施策そのものの効果は約1.82倍だった、と報告されています[1]。
下の図は、この3つの数字を見比べたイメージです。いちばん左の「生の伸び(5.7倍)」をそのまま施策の成果だと思いたくなりますが、その大半は成長分で、施策が生んだぶん(1.82倍)はずっと小さい。生の倍率だけを見ていると、効果を3倍近く大きく見積もってしまう、ということです。

ここで大事なのは、この差を「だから施策は無駄だ」と受け取らないことです。1.82倍は、施策が確かに上乗せした本物の効果です。問題は、生の倍率をそのまま信じると、効いていない施策まで「効いた」と勘違いし、力を入れる場所を見誤ること。だからこそ、成長分と効果分を分けて見る必要があります。なお、この研究では効果の確からしさを念のため確かめる追加の検証も行われており、結果は「効果がありそう」という示唆にとどまる、と慎重に書かれています。断定はできないが、向きとしては効いていそう、という温度感です。
3. 本物の増分を見分ける2つの見方#
結論から言うと、施策が生んだ本物の増分は、2つの見方で見分けます。1つは「施策を打っていないページとの差分」で見ること。もう1つは「増えた流入が実際に買っているか」を訪問あたりの売上で見ることです。
1つ目の見方は、対照を置くことです。施策を打ったページの伸びを、施策を打っていないページの伸びと並べて、その差を見ます。両方が同じくらい伸びていれば、それは成長分であって施策の効果ではない。施策を打ったページだけが余計に伸びていれば、その差が本物の効果です。考え方そのものは難しくありません。同じ期間・同じ条件で、片方だけに施策を入れて比べるだけです。
2つ目の見方は、増えた流入が売上につながっているかを見ることです。流入が増えても、その人たちが買わなければ、ビジネスとしての増分はゼロに近い。だから、AI経由で来た人が訪問あたりどれくらい買っているか(RPS=Revenue Per Session、訪問1回あたりの売上)を見ます。流入数だけでなく売上までそろえて見て初めて、施策が「売れる流入」を増やしたのか、「来るだけで買わない流入」を増やしただけなのかが分かります。
下の図は、AI流入を売上まで落として見るときの段階を表したものです。「AIに見えた」→「クリックして来た」→「訪問あたりの売上が出た」と、層が下りるほど、ビジネスに効く本物の数字に近づきます。生の流入数は上の層の話で、それだけでは売上の増分は見えません。

考え方はどちらもシンプルです。けれど、毎月・チャネルごと・ページごとに、施策ありとなしを並べ、さらに売上までそろえて見比べるのは、手作業だとかなり骨が折れます。しかも、その素材になるGA4の数字自体が、放っておくと歪みます。次の章で、その歪みと、まとめて肩代わりする方法を見ていきます。
下の図は、生の伸びを「成長分」と「効果分」に分けて見たときの重なりのイメージです。見えている大きな伸びのうち、色の濃い効果分はごく一部で、残りの薄い部分は成長分です。生の倍率だけを見ると、この重なり全体を効果だと勘違いしてしまいます。

RevenueScopeの解決策
ここまでで、本物の増分を見分ける考え方は見えました。対照との差分で見て、売上までそろえて見る。ただ、これを実際にやろうとすると、壁が2つあります。
1つは、そもそもの素の数字が歪むことです。AI経由の流入には、人ではないアクセス(bot)が混じります。さらに、ChatGPTやGeminiからの流入は、設定をしていないと「どこから来たか不明(Direct)」に紛れて、AI経由として切り分けられません。素材のGA4の数字が歪んでいると、対照との差分も訪問あたりの売上も、ずれた値で出てしまいます。もう1つは、対照との比較も売上までの接続も、ページごと・チャネルごと・月ごとに手作業で繰り返すと、毎回かなり重いことです。自分で1回試すことはできても、続けるのは構造的に骨が折れます。
RevenueScope は、この2つの壁を肩代わりします。クリックして来たAI流入を、bot を除いたうえで、引用元のエンジン(ChatGPT・Claude・Perplexity・Geminiなど)別やページ別に分け、それぞれの流入数・訪問あたりの売上(RPS)・売上を1つの画面で見比べられるようにします(表示はデモデータ)。「どれだけ来たか」だけでなく「来た人が買ったか」まで、同じ画面でそろえて確認できます。
| 流入元 | AI経由の流入 | 訪問あたり売上(RPS) | 売上 |
|---|---|---|---|
| 施策ありページ(ChatGPT経由) | 180 | ¥1,420 | ¥255,600 |
| 施策なしページ(ChatGPT経由) | 168 | ¥430 | ¥72,240 |
| 全体(bot除外後) | 348 | ¥940 | ¥327,840 |
この表の読みどころは、流入数では施策ありと施策なしがほぼ並んでいる(180対168)のに、訪問あたりの売上では大きく差がついている点です。流入数だけを見ていたら、「施策ありもなしも同じくらい増えた=成長分が大半で、施策は効いていない」と結論づけたかもしれません。ところが訪問あたりの売上で見ると、施策ありページのほうが3倍以上よく買われている。施策は流入数ではなく「売れる流入」を増やしていた、と分かります。こうしてbotを除き、施策ありとなしを並べ、売上までそろえると、生の倍率では見えなかった本物の増分が数字で見えてきます。
ひとつ、はっきりさせておきます。RevenueScope が数えるのは、クリックして実際にサイトに来た流入とその売上だけです。AIの回答に名前が出ただけ(クリックなし)の露出そのものや、施策の因果を学術的に厳密に証明することまではしません。また、粗利や在庫までは計算しません。RevenueScope が肩代わりするのは、AI流入を bot を除いたうえでエンジン別・ページ別に分け、訪問あたりの売上までそろえて見比べる材料を整えるところ。どの施策を続けるかは、あなたが決めます。
FAQ#
よくある質問#
Q. AI流入が5倍に増えたのに、それでも「効いた」と言えないのですか?
A. 5倍という生の数字には、AI自体が広まった成長分が大きく混ざっています。研究では、施策を打っていないページでも同じくらい伸びていたため、施策そのものの効果は生の倍率よりずっと小さい、という結果が報告されています。「増えた」ことは事実でも、そのうち「施策が生んだぶん」を取り出すには、施策を打っていないページとの差分で見る必要があります。
Q. 対照(施策なしページ)を用意するのが難しい場合は、どうすればいいですか?
A. 厳密な対照を置けないときは、もうひとつの見方が効きます。増えた流入が実際に買っているか(訪問あたりの売上)を見ることです。流入数が増えても訪問あたりの売上が伸びていなければ、ビジネスとしての増分は薄い。流入数と売上の両方を、流入元ごとにそろえて見れば、本物の増分に近づけます。
Q. GA4で「AI経由の流入が増えた」と出ていれば、それを信じていいですか?
A. そのまま信じるのは危ういです。AI経由の流入にはbotが混じり、設定をしていないと「どこから来たか不明(Direct)」に紛れることもあります。素の数字が歪んでいると、増分も売上も、ずれた値で出てしまいます。botを除き、AI経由を切り分け、売上までそろえて見て初めて、本物の増分が見えてきます。
まとめ#
AI流入が増えても、それだけで「施策が効いた」とは言えません。近ごろの研究では、伸びの多くがAI自体が広まった成長分で説明でき、施策そのものの効果はずっと小さい、という議論が出ています。前と比べて何倍になったかという生の倍率は、成長分と効果分が混ざっているため、施策の因果を実際より大きく見せてしまいます。
本物の増分を見分けるには、2つの見方があります。施策を打っていないページとの差分で見ること、そして増えた流入が実際に買っているか(訪問あたりの売上)で見ることです。どちらも考え方はシンプルですが、毎月・ページごと・チャネルごとに手作業で繰り返すのは重く、しかも素材になるGA4の数字自体がbotや「どこから来たか不明」への紛れで歪みます。
だからこそ、AI流入をbotを除いて切り分け、施策あり・なしを並べ、訪問あたりの売上までそろえて見られる状態にしておくことが効いてきます。生の倍率に踊らされず、本物の増分を数字で見分ければ、どの施策を続けるべきかを勘でなく判断できます。
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