·更新 2026年7月8日·RPS / 広告予算配分 / ケーススタディ / ROAS / EC指標

広告予算はRPSで決める3社の実例|CVRで選ぶと頭打ち

広告予算の配分はCVRやROAS起点では定まりません。RPS(1セッションあたり売上)を軸に3社(アパレル・雑貨・食品)の予算と施策を組み替えた想定事例を解説。CVRが最高の媒体がRPSでは最下位という逆転や、計測ズレによる誤判断からの立て直しまで見ていきます。

広告予算はRPSで決める3社の実例|CVRで選ぶと頭打ち

本記事の3社は、EC現場ヒアリングと公開データを組み合わせた 想定事例 です。改善幅は事業者・業種・施策で大きく変わりますが、各ケース(+15% / +8% / +22%)はEC現場で観察される+5-20%レンジ内に収めた設定です。

「広告予算をどこにどれだけ配分するか」。この問いにCVRやROASを起点に答えようとすると、判断軸が定まらず頭打ちになります。本記事では、RPS(1セッションあたり売上)を軸に予算と施策を組み替えた3社の実例を見ていきます。CVRが最高の媒体がRPSでは最下位、という逆転が起きるからです。

まとめ解説動画

この記事のまとめ#

  1. 広告予算の配分はCVRでなくRPSで決める

    RPS=1セッションあたり売上=AOV×CVR。CVRが最高の媒体でも、AOVが低ければRPSでは最下位になりうる

  2. 3社の組み替え結果はアパレル+15%・雑貨+8%・食品+22%

    媒体を組み替えたA社、媒体差が小さくAOVで効かせたB社、計測ズレを直したC社。業種が違っても判断軸は同じ

  3. 計測がズレるとRPSそのものが誤った判断材料になる

    UTMの表記揺れ・CV計上漏れ・最終接点だけの評価で、C社は3か月間まちがった媒体に予算を寄せた

  4. 考え方は簡単、重いのは手作業の反復

    RPS分解の理屈は掛け算1つ。ただしチャネル横断で毎回そろえて見比べる作業が重く、ここで判断が止まりやすい

1.3社の概要とRPS×CVRの見方#

広告予算の配分は、CVRやROAS単体でなくRPSで決めてください。RPSは「1セッションあたり売上」で、AOV(注文1件あたりの平均金額)×CVR(購入率)に分解できます。CVRだけを見て予算を寄せると、単価の低い媒体に予算が集まり、売上効率が頭打ちになります(基礎はRPS完全ガイドで解説しています)。

3社の概要はこうです。CaseAはアパレルEC。Meta広告のCVRが最高に見えて予算を集中していました。CaseBは生活雑貨EC。媒体間のRPS差がほとんどなく、打ち手に迷っていました。CaseCはD2C食品EC。計測のズレでRPSの数字そのものが歪み、初動で判断を誤りました。3社とも、RPSを軸に予算と施策を組み替えた結果、RPSが+15%・+8%・+22%改善しています。

3社のRPS改善を組み替え前と後で並べた棒グラフ。アパレルは85円から98円へ+15%、雑貨は75円から81円へ+8%、食品は125円から152円へ+22%改善したことを示す

なぜCVRだけでは判断を誤るのか。CVRは「何%が買ったか」しか見ておらず、「いくら買ったか」が抜けているからです。RPSとCVRの使い分けはRPSとCVRの違いで詳しく整理していますが、要点は1つ。媒体ごとにRPSとCVRを2軸で置いてみると、CVRの順位とRPSの順位が入れ替わることがある、ということです。次のCaseAが、まさにその逆転の実例です。

2.CaseAアパレル|CVR最高の媒体がRPSでは最下位#

CVRが最も高い媒体が、RPSでは最下位でした。月商2,500万円のアパレルECで、Meta広告のCVRは2.1%と全媒体で最高。予算の7割を集中していました。ところがRPSで見るとMeta経由は72円で、Google検索広告の110円、自然検索の95円を下回る最下位です。

からくりはAOVです。Meta経由のAOVは3,400円と、Google検索広告経由(7,800円)の半分以下でした。低単価の商品ばかりが売れていたため、「買う人の割合」は高くても「1訪問が生む売上」は小さかったのです。CVRの高さは広告効率の高さを保証しません。RPSとCVRの2軸で媒体を並べてみると、この位置関係がひと目でわかります。

RPSとCVRの2軸で媒体を配置した4象限の散布図。Meta広告はCVRが高い一方RPSが低い象限に、Google検索広告はCVRが低い一方RPSが高い象限に位置し、CVRの順位とRPSの順位が逆転していることを示す

A社はMeta予算を7割から4割へ圧縮し、Google検索広告と自然検索への投資に振り向けました。Meta側も高単価商品を優先表示する構成に変更。3か月後、サイト全体のRPSは85円から98円へ+15%改善しました。アパレル業種のRPS中央値はおよそ90円で、中央値超えまで戻した形です。自社の業種でどの水準を目指すかは業種別RPSベンチマークが参考になります。

3.CaseB雑貨|媒体差が小さいときはAOVで効かせる#

媒体間のRPS差が小さいときは、予算の組み替えでなくAOVの底上げが効きます。月商1,200万円の生活雑貨ECで、媒体別RPSはMeta68円・Google検索82円・Yahoo!71円・自然検索78円とほぼ拮抗。予算をどう動かしても大きな差が出ない状態でした。

構造問題は媒体でなくサイト側にありました。AOVが3,200円と低く、1点買いで終わる注文が大半だったのです。B社は媒体予算の配分は変えず、送料無料の金額ラインの引き上げと「あわせて買われる商品」の提示強化でAOVを4,100円まで改善。CVRは1.6%から1.55%へわずかに下がりましたが、掛け算の結果であるRPSは75円から81円へ+8%改善しました。

RPSがAOV×CVRの掛け算である以上、効かせる変数は2つあります。媒体間の差が小さいなら、動かすべきはCVRでなくAOV側かもしれません。AOVを上げる打ち手の考え方はAOV(顧客単価)改善ガイドにまとめています。

4.CaseC食品|計測ズレを直してRPS+22%#

RPSで判断する前提は、正確な計測です。月商4,800万円のD2C食品ECは、RPS主軸の予算配分を導入したのに、最初の3か月はRPS125円から128円とほぼ停滞。原因は施策でなく、判断材料そのものが歪んでいたことでした。

歪みの正体は3つ。UTMパラメータの表記揺れで同じ媒体が別チャネルに割れて集計されていたこと。ブラウザのCookie制限でMeta経由のCV計上漏れが起きていたこと。そして最終接点だけで売上を評価し、アシストしたチャネルの貢献を見落としていたこと。この状態でRPSを見比べた結果、実際には稼いでいたMetaの予算を削り、逆方向に予算を寄せてしまったのです。

C社は4か月目に計測の立て直しへ舵を切りました。表記揺れの名寄せ、売上データの取り直し、複数のアトリビューションモデル(どの接点に売上を割り当てるかの計算方法)での見直しです。考え方自体は簡単です。ただし、これをチャネル横断で毎回そろえ、モデルを変えて見比べる作業は手作業ではかなり重く、月次で回し続けるのはさらに重い。是正後の3か月でRPSは128円から152円へ伸び、当初からの累計で+22%に到達しました。

CaseC食品ECの6か月間のRPS推移を示す時系列グラフ。導入直後の3か月は125円から128円とほぼ停滞し、計測を立て直した4か月目を変曲点として152円まで伸びたことを示す

3社に共通するのは、「チャネル別にRPSとAOVを分解し、正しい計測の上で見比べる」という1つの型です。この型をダッシュボードとしてどう組むかは売上ダッシュボード設計の正解で扱っています。そして、この型を毎回手作業で回す重さこそが、次に述べる解決策の出番です。

RevenueScopeの解決策

RevenueScope は、チャネル別のRPS・AOV分解とアトリビューションモデルの切り替えを1画面に置きます。広告費を連携した場合(Path B)は、実測ROAS・飽和度・予算配分案も同じ画面に並びます。C社が手作業で苦しんだ「そろえて見比べる反復」を画面側が持つので、次にどのチャネルへ予算を動かすかの判断に集中できます。

実際の画面の数字を見てみます。デモ用のサンプルEC店舗、90日間のデータです。

チャネルRPSROAS飽和度
Meta広告132円1.8667%
Google広告116円3.1849%
ChatGPT(非広告・参考)622円
ダイレクト(非広告・参考)570円

(サンプルデータのフィクションEC[RevenueScopeデモ]・広告費連携済[Path B])

広告2チャネルはMetaが419セッション・Google広告が302セッションで、RPSは132円と116円。ChatGPT経由の622円やダイレクトの570円、Google検索の304円と比べると低い水準です。ここでCVRやROAS単体を見ても答えは出ません。Metaは飽和度67%で、これ以上予算を積んでも伸びにくい頭打ちの領域。一方Google広告はROAS3.18かつ飽和度49%で、まだ伸ばす余地があります。RPS×飽和度まで並べて初めて、「次に動かすのはGoogle広告側」という一手が決まるのです。

RevenueScope が担うのは、売上ベースのRPS・ROAS・飽和度を1画面にそろえ、次にどのチャネルへ予算を動かすかの判断材料を出すことです。粗利やLTVを追うのではなく、1セッションあたり売上を軸にした指標に特化することで、そろえて見比べる反復を画面側が引き受けます。だから、次の一手に集中できます。

FAQ#

Q. CVRが一番高い媒体に予算を寄せるのは間違いですか?

A. 間違いとは限りませんが、CVRだけでは判断できません。CaseAのように、CVRが最高でもAOVが低ければRPSでは最下位になりえます。媒体ごとにRPS(=AOV×CVR)まで分解してから決めるのが安全です。

Q. 自社のRPSが良いのか悪いのか、どう判断すればいいですか?

A. 業種の中央値と比べてください。アパレルはおよそ90円、食品・D2Cはおよそ135円など、業種でRPSの水準は2〜3倍違います。自社の絶対値だけを見ても、改善余地があるのかは判断できません。

Q. 広告費を連携していないと、ROASや飽和度は見られませんか?

A. はい。実測ROASと飽和度、予算配分案は広告費を連携したPath Bのときだけ表示されます。連携前でも、チャネル別のRPS・AOV分解やアトリビューションモデルの切り替えは使えます。

まとめ#

広告予算の配分は、CVRやROASを単体で見ても定まりません。RPS=AOV×CVRまで分解すると、CVRが最高の媒体がRPSでは最下位、という逆転が見えてきます。媒体を組み替えたA社は+15%、媒体差が小さくAOVで効かせたB社は+8%、計測のズレを直したC社は+22%。3社に共通するのは、正しい計測の上でチャネル別にRPSを見比べる、という1つの型です。考え方は簡単ですが、手作業でそろえて回し続ける反復は重い。その反復を画面に持たせて、判断だけに集中する。それが頭打ちを抜ける近道です。

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