「ヒートマップを入れたら売上は伸びますか」。EC事業者から最も多く受ける質問のひとつです。結論から言うと、ヒートマップは 「ページのどこで売上が逃げているか」 を仮説立てするための優れたツールですが、「どの広告・どの流入から売上が来ているか」 は答えてくれません。この記事ではヒートマップツール5社(Microsoft Clarity / Hotjar / Crazy Egg / Mouseflow / Ptengine)を機能・価格・データ保持期間で比較し、5社共通の限界と、それを補う指標までを整理します。
この記事のまとめ#
- 無料で使える主要ヒートマップは2社(Microsoft Clarity と Hotjar Free)。Microsoft Clarityはセッション無制限・完全無料、Hotjar Freeは月200kセッション・データ保持1ヶ月という棲み分け
- 有料3社(Hotjar有料 / Crazy Egg / Mouseflow)の差別化軸は、A/Bテスト統合・フォーム分析・摩擦検出の3点。価格はMouseflow Essential 25ドルから、Crazy Egg Enterprise 599ドルまでレンジ広い
- 5社共通の限界は「ページ内行動と売上は結びつくが、チャネル別の売上効率(RPS / AOV / ROAS)は出ない」こと。ヒートマップで「LPのどこで離脱しているか」を見るのと、「どの広告から来た訪問者が買ったか」を見るのは別の問いで、解くツールも別
1. ヒートマップで「見える」もの/「見えない」もの#
ヒートマップツールの本質は、ページ内のユーザー行動を可視化する仕組み です。クリック箇所の集中、スクロール深度、マウス移動の軌跡、フォーム入力の途中離脱などを、ページ要素単位で見える化します。
ヒートマップで答えられる質問と、答えられない質問は次のように分かれます。

ヒートマップで分かるのは 「ページ内の行動」 であり、「広告投資の効率」とは別レイヤーの話です。ECサイトで売上を伸ばすには、両方の視点が必要になります。本記事ではまず5社のヒートマップツールを比較し、その後で「ヒートマップでは見えない」領域をどう補うかを整理します。
2. 無料2社の到達点と上限 — Microsoft Clarity と Hotjar Free#
ヒートマップ導入の入口になる無料ツールは、実質的に2択です。Microsoft Clarity と Hotjar Free(Contentsquareグループ)。両者は性格がかなり違います。
2.1 Microsoft Clarity — 完全無料・セッション無制限#
Microsoft Clarity(clarity.microsoft.com)は、Microsoftが2020年に公開して以来、現在も 完全無料・セッション数無制限 で提供しているヒートマップ/録画/AI分析ツールです[1]。公式サイトは「無期限で無料でご利用いただけます」「トラフィックに制限はありません」と明記しています。
主な機能は以下の通りです[1]。
- セッション録画(Session Recordings):訪問者の操作を動画として再生
- ヒートマップ:クリック / スクロール / 離脱パターンを可視化
- AI要約:行動パターンを自動でテキスト要約
- AI Chat:質問形式でデータに問い合わせ
- モバイルアプリ対応:Android / iOS / Flutter / React Native
Clarityの強みは、価格が壁にならないこと です。月間100万PV規模のサイトでも料金が発生しないため、「ヒートマップを試したいが予算が取れない」という事業者の最初の一歩として最適です。データ保持期間は公式ドキュメントで明示されていない部分もありますが、運用上は3ヶ月程度のデータ参照が可能と報告されています。
弱点は、深掘り分析の機能が他社より浅い ことです。A/Bテスト統合、フォーム解析、コンバージョンファネル分析などは別ツールを併用する必要があります。
2.2 Hotjar Free(Contentsquareグループ)— 200kセッション無料#
Hotjar は2021年にContentsquareに買収され、2026年現在は 「Contentsquareグループの一員」 として運営されています(Hotjar公式アナウンスより)[2]。Hotjarブランド自体は継続しており、Free / Growth / Pro / Enterpriseの4プラン構成です[3]。
Hotjar Free の特徴は以下の通りです[3]。
- 月200kセッション まで無料(過去のFreeプランより上限が大幅に拡張された)
- データ保持:1ヶ月
- セッション録画キャプチャ率:5%(最大10k)
- ヒートマップ / ファネル / Replays / エラー&パフォーマンスモニタリング / Basic Surveys
- MCP連携(LLMから Hotjar データに問い合わせる新機能)
Microsoft Clarity との比較で言えば、Hotjar Free は データ保持期間が短い(1ヶ月) 一方で、サーベイ機能やMCP連携 が無料で使える点が独自です。月間200k未満のセッションで、ユーザーへのアンケート機能を併用したい事業者には Hotjar Free が向きます。
2.3 無料2社の使い分け — 判断基準#
無料2社の選び方は次の3軸で決まります。
| 軸 | Microsoft Clarity が向く | Hotjar Free が向く |
|---|---|---|
| トラフィック | 月200k超のサイト | 月200k未満のサイト |
| データ保持 | 長期間データを残したい | 1ヶ月以内で十分 |
| 必要機能 | 録画・ヒートマップだけで十分 | サーベイ・MCP連携も使いたい |
両方を併用しているEC事業者も多く、「Clarityで全体を見て、Hotjarでサーベイを回す」という運用は珍しくありません。無料同士なので、迷ったら 両方入れて試す のが最もコストパフォーマンスが良い選択肢です。
3. 有料3社の差別化軸 — Hotjar有料 / Crazy Egg / Mouseflow#
無料プランで限界が見えたら、次は有料プランの検討です。代表的な3社の特徴と価格帯を整理します。

3.1 Hotjar有料プラン(Contentsquareグループ)#
Hotjarの有料プランは、Free($0)/ Growth($39〜/月)/ Pro(要問い合わせ)/ Enterprise(要問い合わせ)の4階層です[3]。Growth以降では「Sense, Contentsquare's AI」「Engagement Zones in heatmaps」「Frustration Score」「Impact Quantification」など、Contentsquare統合の高度機能が追加されます。
注目すべきは Pro プランで登場する 「Zone-based Heatmaps: Revenue metrics」 と 「Impact Quantification: Quantify Revenue」 です。これは「ページ内の各ゾーン(要素)が売上にどれだけ寄与しているか」を可視化する機能で、ヒートマップ業界の最新トレンドである 「ページ要素単位の売上アトリビューション」 に対応しています。ただしこの売上アトリビューションは 「ページ内のどこで」 という空間軸の話であり、「どのチャネル(流入元)から」という流入軸の売上分析ではありません。この区別は記事の最後で改めて整理します。
| プラン | 月額 | 月間セッション | データ保持 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | Up to 200k | 1ヶ月 |
| Growth | $39〜(通常$49) | 7k - 10m | 13ヶ月 |
| Pro | Let's talk | 1m - unlimited | 13ヶ月 |
| Enterprise | Let's talk | 1m - unlimited | 13ヶ月 |
3.2 Crazy Egg — 老舗・A/Bテスト統合#
Crazy Egg(crazyegg.com)は2005年創業のヒートマップツールで、業界最古参の1社です。価格と機能は以下の通り[4]。
| プラン | 月額 | PV上限 | 録画 | ヒートマップレポート |
|---|---|---|---|---|
| Starter | $29 | 5,000 | 50 | 5本 |
| Plus | $99 | 150,000 | 1,000 | 75本 |
| Pro | $249 | 500,000 | 5,000 | 100本 |
| Enterprise | $599 | 1,000,000 | 10,000 | 200本 |
すべての価格は年契約ベース。Plus以降では A/Bテスト機能 / エラー追跡 / CTA最適化機能 が追加されます。月間PV5,000以下の小規模サイトなら $29 で始められる点が魅力で、ECオーナーが「LPのCTAをA/Bテストしたい」というユースケースには Plus($99)が標準的な選択肢になります。
3.3 Mouseflow — フォーム分析と摩擦検出に強み#
Mouseflow(mouseflow.com)はデンマーク発のヒートマップツールで、フォーム解析と「Friction Detection(摩擦検出)」 に特化した機能が強みです[5]。
| プラン | 月額 | セッション | データ保持 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | 500 | 1ヶ月 |
| Essential | $25 | 5,000 | 3ヶ月 |
| Advanced | $109 | 25,000 | 6ヶ月 |
| Premium | $319 | 100,000 | 12ヶ月 |
| Enterprise | Custom | Custom | Custom |
特徴的なのは Essentialプランから「Friction Insights」「Form Analytics」が使える 点です。フォーム入力の途中離脱率を項目単位で測定し、「住所入力で30%離脱」「クレジットカード番号入力で20%離脱」のように、購入フォームの改善箇所をピンポイントで特定できます。月間セッション5,000程度の中小ECで、購入フォームの改善が課題なら Mouseflow Essential($25)が費用対効果に優れます。
3.4 有料3社の選び方#
3社の使い分けは、何を解きたいか で決まります。
| 課題 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| LPのページ要素別売上を見たい | Hotjar Pro | Zone-based Heatmaps の Revenue metrics |
| LPのCTA / コピーをA/Bテストしたい | Crazy Egg Plus | A/Bテスト機能を$99で使える |
| 購入フォームの離脱を改善したい | Mouseflow Essential | Form Analytics が安価から使える |
| 全部やりたい・予算潤沢 | Hotjar Pro | Sense AI 含めた統合プラットフォーム |
4. 国産Ptengineの位置づけ — 日本語UI・PV課金モデル#
国産ヒートマップツールとして無視できないのが Ptengine(ptengine.jp)です。2026年4月現在、3プラン構成です[6]。
| プラン | 月額(税抜) | PV計測上限 | データ保持 |
|---|---|---|---|
| Free | 0円 | 3,000 PV/月 | 30日 |
| Growth | 4,980円〜 | 3,000〜500,000 PV/月 | 12ヶ月 |
| Premium | 89,800円〜 | 500,000 PV超 | 12ヶ月以上 |
Ptengineの特徴は次の3点です。
4.1 完全日本語UI・国内サポート#
メニュー / レポート / マニュアル / カスタマーサポートがすべて日本語。「英語UIだとチームに浸透しない」という現場には大きなアドバンテージです。
4.2 PV課金モデル#
セッション数ではなく PV数で課金 されます。1セッションが平均何PV見るかで、見かけ上の安さが変わります。例えば1セッション=5PVのサイトの場合、月間100kセッション ≒ 500k PVとなり、Premium プラン領域に入ります。「セッション課金より自社のサイト運営に合うか」を試算する必要があります。
4.3 改善機能との統合#
Ptengine は 「Insight(分析)」と「Experience(改善:A/Bテスト・パーソナライゼーション)」 が同一プラットフォームで提供されます。海外ツールでは別ツール契約が必要な領域を、Ptengine 1本で完結できる点が国産ならではの強みです。
4.4 弱点#
サンプリングがある(Free と Growth では一部機能でサンプリング)、海外ツールに比べて録画機能の細部(コンソールエラー記録など)が浅い、海外サポート言語に対応していない、などです。
国産企業や日本市場特化のEC事業者なら Ptengine が選択肢に入りますが、グローバル展開する事業者は海外ツール(Microsoft Clarity 無料 + Hotjar Pro等)の方が適合度が高い傾向です。
5. 5社共通の限界 — 売上に紐付かない理由#
ここまで5社のヒートマップツールを比較してきました。機能・価格・対応領域はそれぞれ異なりますが、5社すべてに共通する構造的な限界 が1つあります。それは 「ヒートマップは流入元(チャネル)別の売上効率を出さない」 ことです。
5.1 「ページ内」と「流入元」は別軸#
ヒートマップが扱うのは、ページ内に到達した後の行動 です。
- どこをクリックしたか
- どこまでスクロールしたか
- どのフォーム項目で離脱したか
- マウスがどこで止まったか
これに対し、ECサイトの 投資判断(広告費の配分・チャネル選択) に必要なのは 「どこから来た訪問者がいくら買ったか」 という情報です。
| 観点 | ヒートマップが答える | 答えない |
|---|---|---|
| 空間軸(ページ内) | LPのどこで離脱しているか | — |
| 時間軸(行動順序) | 訪問者がどう動いたか | — |
| 流入軸(どこから来たか) | — | どの広告経由の訪問者が買ったか |
ヒートマップ業界の最新トレンドである Hotjar Pro の「Zone-based Heatmaps: Revenue metrics」も、ページ内のどのゾーンが売上に寄与したか を測るもので、「Google広告経由の訪問者の売上効率」「Meta広告のROAS」は依然として測れません。
5.2 広告効果測定の核となる3指標 — AOV / RPS / ROAS#
EC事業者が広告投資を判断するために必要な指標は、ヒートマップとは別系統で取る必要があります。代表的なものが次の3つです。
- AOV(Average Order Value:平均注文単価) — 売上 ÷ 注文件数
- RPS(Revenue Per Session:セッション単価) — 売上 ÷ セッション数
- ROAS(Return On Ad Spend:広告費用対効果) — 売上 ÷ 広告費
これらは チャネル単位 / UTM単位 / LP単位 で算出することで初めて意味を持ちます。「Meta広告経由のセッションのRPSは150円、Google検索広告経由は450円」という数字が出て初めて、広告予算をどこに振り向けるかを判断できます。
詳しくは別記事で解説しています:
- ROAS計算式 完全ガイド — ROASの正しい計算と分母の落とし穴
- UTMパラメータの正しい使い方 — チャネル別売上を集計するための前提
- GA4のラストクリック信仰の罠 — チャネル別売上のアトリビューション選択
- Meta広告のutm_source、結局何を入れるのが正解か — Paid Social分類の前提条件
5.3 ヒートマップとチャネル分析は補完関係#
整理すると、ヒートマップツールとチャネル分析ツールは 競合ではなく補完関係 にあります。

「LPのCTAボタンの位置を変えたら離脱が30%減った」のはヒートマップの仕事、「Meta広告の配信を停止して Google広告に予算を寄せたら全体のROASが180%→240%に改善した」のはチャネル分析の仕事です。両方を見て初めて、ECサイトの最適化サイクルが回ります。
6. 目的別の選び方 — フローチャート#
5社の中からどれを選ぶかは、「何を解きたいか」 で機械的に決まります。価格とセッション規模の関係を俯瞰すると次の通りです。

| あなたの状況 | 選ぶべきツール |
|---|---|
| 予算ゼロ・セッション200k超 | Microsoft Clarity(無料・無制限) |
| 予算ゼロ・セッション200k以内・サーベイも使いたい | Hotjar Free + Microsoft Clarity 併用 |
| 月$30以下で購入フォーム改善したい | Mouseflow Essential($25) |
| 月$100以内でA/Bテスト統合したい | Crazy Egg Plus($99) |
| ページ要素別の売上を見たい | Hotjar Pro(要問い合わせ) |
| 国産・日本語UI必須 | Ptengine Growth(4,980円〜) |
ただし、上記いずれを選んでも 「チャネル別の売上効率」は別ツールが必要 です。RevenueScopeのような 売上から逆引きする アクセス解析ツールと組み合わせることで、ヒートマップで見えるページ内最適化と、チャネル分析で見える投資配分判断の両方が回せるようになります。
「ヒートマップを入れたが、結局広告予算をどこに寄せればいいか分からない」というEC事業者にとって、足りないのは別のヒートマップツールではなく、売上を起点にしたセッション分析の視点 です。
まとめ#
- 無料2社(Microsoft Clarity / Hotjar Free) は完全に棲み分けが成立。Clarityは無制限・長期保持、Hotjar Freeは200kまで・MCP連携付き
- 有料3社(Hotjar / Crazy Egg / Mouseflow) は解きたい課題で選ぶ。要素単位売上ならHotjar Pro、A/BテストならCrazy Egg、フォーム改善ならMouseflow
- Ptengine は日本語UIと統合プラットフォームが強み。PV課金モデルなので自社の平均PV/セッションで試算
- 5社共通の限界は「ページ内行動の可視化に強いが、チャネル別売上効率は出ない」こと。投資判断にはチャネル分析ツールとの併用が前提
ヒートマップで「どこで」を、チャネル分析で「どこから」を。両軸の指標が揃って初めて、ECサイトの売上は再現性を持って改善できます。
参考文献#
[1] Microsoft 「Microsoft Clarity 公式サイト」 2026年4月確認 https://clarity.microsoft.com/
[2] Hotjar 「進化してさらにパワーアップしたHotjar — Contentsquareグループ統合のお知らせ」 2026年4月確認 https://www.hotjar.com/
[3] Contentsquare 「Hotjar Pricing — Experience Analytics プラン一覧」 2026年4月確認 https://contentsquare.com/pricing/
[4] Crazy Egg 「Pricing — Starter / Plus / Pro / Enterprise」 2026年4月確認 https://www.crazyegg.com/pricing
[5] Mouseflow 「Pricing — Free / Essential / Advanced / Premium / Enterprise」 2026年4月確認 https://mouseflow.com/pricing/
[6] Ptengine 「料金プラン — Free / Growth / Premium」 2026年4月確認 https://www.ptengine.jp/plan/
[7] ITreview 「Ptengine 価格情報」 2026年3月確認 https://itreview.jp/products/ptengine/price
