ディスプレイ広告だけコンバージョンが多いのに、自社の売上はその分だけ増えていません。原因は、その数字にどこまでの接点が含まれているかにあります。クリックした人だけで測り直すと何が変わるかを整理します。
目次
この記事のまとめ#
- ディスプレイのコンバージョンには、表示されただけでクリックしていない人の購入(ビュースルー)が含まれる
- 含む範囲は媒体と設定で決まるので、いま開いている数字によっては当てはまらない
1.ディスプレイのCVだけ多いのは、含まれている接点が異なるから#
ディスプレイ広告だけコンバージョンが多く出るのは、その数字に含まれている接点が、他の広告と異なるからです。
管理画面では、ディスプレイのコンバージョンが検索広告の2倍近くあります。
ここで意見は2つに割れます。この成果を信じて増額するか、水増しとみなして止めるか。どちらも、いくら変えるのかが決まらないところで行き詰まります。
含まれているのはビュースルーコンバージョンです。広告が表示されただけでクリックしていない人の購入を、成果として計上する集計です[1]。
どの数字に入るかは、媒体と設定で決まります。Google広告のビュースルーは、画面で「コンバージョン」と表示されている数字には入りません。入るのは、「ビュースルー コンバージョン」と「すべてのコンバージョン」の2つだけです[1]。だから「コンバージョン」の数字を見ていてディスプレイが膨らんでいるなら、原因はビュースルーではありません。当てはまるのは、「すべてのコンバージョン」を見ている場合か、Metaのように設定しだいで成果に入る媒体です。
Metaの標準のアトリビューション設定にはクリックスルーとビュースルーがあり、選んだ設定に応じて成果に含まれます[2]。クリックスルーは、クリックした人の購入です。
ディスプレイでこの比率が大きくなるのは、検索広告と比べてクリック率が低く、表示回数が桁違いに多いからです。
媒体が意図的に多く計上しているわけではありません。コンバージョン計測は、その媒体の広告への接触を起点に記録する仕組みだからです[3]。
Meta1社に絞って同じ仕組みを扱ったのがMetaのAdvantage+|成果が大きく見える仕組みです。この記事は媒体を問わず、来月の配分を決めるところまでを扱います。管理画面とGA4のCV数が合わない件は別の要因です(広告とGA4のCV数が合わない|合わせず実売上で見る)。

3つ目の24件は、計測タグが受け取ったUTM・クリックID・参照元から、ディスプレイ由来と判別できた注文です。
2.クリックした人だけで測り直すと、ROASはどこまで下がるか#
分子から表示を起点にした分を外すと、同じキャンペーンのROASは別の値になります。
ROASとは、広告費に対して何倍の売上が返ってきたかを示す指標です。分母は広告費で固定されるので、値を決めているのは分子のほうです。以下の計算では、ビュースルーの購入もクリックの購入も、1件あたりの売上は同じとしています。
媒体が申告したコンバージョン全部 100件 → ROAS 3.9倍
クリックした人のコンバージョンだけ 38件 → 3.9 × 38 ÷ 100 = 1.5倍
自社計測で判別できた注文 24件 → 3.9 × 24 ÷ 100 = 0.9倍

3.9倍と0.9倍は、同じ広告費・同じ1か月の数字です。違うのは分子に何を入れるかだけです。
媒体の管理画面でも、クリックした人と表示だけの人を分けて確認する道はあります。ただし、区分の呼び名も計上の期間も媒体ごとに異なります。Google広告では、ビュースルーをさかのぼる日数をコンバージョンアクション単位で設定します[4]。1回の広告接触のあとのコンバージョンを、すべて計上するか1件だけにするかも設定で変わります[5]。媒体をまたぐと、同じ意味の数字ではなくなります。
ROASと呼ばれる数字が3種類あることはROAS3種の使い分け|予算判断はどれを見るで整理しました。同じ注文を複数の媒体がそれぞれ申告する重なりは、これとは別の機序です(リターゲティングのROASだけ高い|リピート購入の合算では?)。
3.同じROASでも、次にお金を足す先は同じにならない#
配信別に見た媒体申告のROASは、上位2つがほとんど同じ値になります。
架空店舗Dのディスプレイ広告を、配信別に見てみます。

4.3倍と4.2倍。この2つを見比べても、来月どちらへ足すかは選べません。開きが0.1倍しかないからです。
選ぶための材料は、この表に載せていません。クリックした人の購入だけを取り出すと、バナー配信Aは42件のうち25件、バナー配信Bは38件のうち8件です。割合にすると6割と2割で、これを反映させると2つは同等ではなくなります。
バナー配信A 4.3倍 × 25件 ÷ 42件 = 2.6倍
バナー配信B 4.2倍 × 8件 ÷ 38件 = 0.9倍
動画広告の配信 3.0倍 × 5件 ÷ 20件 = 0.8倍
同等だった上位2つが、2.6倍と0.9倍に分かれました。3つを合わせた38件が、クリックした人の購入の全部です。
同じディスプレイ枠でも、配信ごとに判断は逆になります。増額するのはバナー配信Aで、残る2つは減額かクリエイティブの入れ替えが先です。
4.来月の配分を、どのデータで決めるか#
媒体をまたいで比べられるのは、分子が1つの基準にそろっている数字だけです。
媒体申告のROASは、計上ルールが媒体ごとに異なります。3.9倍と別の媒体の2.4倍を見比べても、どちらが多く売ったかは決まりません。
そろえられる基準は1つあります。自社サイトで実際に発生した購入を、流入元に帰属させた売上です。アトリビューションとは、購入までの経路にある接点へ売上を割り当てる仕組みです[6]。さかのぼる日数で評価が変わる点はルックバック期間とは|さかのぼる日数で広告評価が変わるで扱いました。
この帰属が及ばない範囲もあります。ビュースルーで購入した人はクリックIDもUTMも持たずに戻るので、その注文はDirectやReferralに帰属します。ディスプレイの行は実際より小さく、Directは理由の見えないまま大きく表示されます。
RevenueScopeの解決策
自社側の画面に表示されるのは、帰属できた24件までです。現れていない分と突き合わせるには、媒体の申告値を同じ表に並べる必要があります。その表を RevenueScope が提供します。
媒体側からは、表示回数・クリック・媒体が計上したCV数・CV売上の4項目をそのまま取り込みます。ビュースルーを含んだままの申告値が、自社計測の数字と同じ表に並びます。自社側では、購入を流入元に帰属させた売上と、それを広告費で割ったROASを算出します。広告費は、年・月・チャネル単位のフォーム入力かCSVの一括取り込みで登録します。
同じ内容は、MCP経由でChatGPTやClaudeからも取り出せます。
一事例(イメージ)/架空店舗D・30日
| チャネル | 広告費 | 媒体が計上したCV | 自社計測の帰属売上 | ROAS |
|---|---|---|---|---|
| ディスプレイ広告の媒体 | 75万円 | 100件 | 68万円 | 0.9 |
| 検索広告の媒体 | 40万円 | 52件 | 76万円 | 1.9 |
| Direct | — | — | 96万円 | — |
※ 読み方を示すための一例です。店舗名も数値も架空で、丸めた値を掲載しています。CTAの先はサンプルデータ(日々更新)ゆえ、開いた画面の数値とは合いません。
媒体が計上したCVの100件は、ビュースルーの分を含んだままの値です。帰属売上の68万円が分子に固定されています。Directには広告費が入りません。ビュースルーで戻ってきた購入はここへ混ざり、帰属しなかった売上はUnattributedとして別に表示されます。
ここまでで、判断の単位が2段に分かれます。チャネルへいくら配るかは、自社計測の帰属売上を分子にしたROASで決めます。そのチャネルの中でどの配信へ寄せるかは、媒体の管理画面で決めます。配信別のクリックの取れ方は、そちらにしか表示されないからです。
FAQ#
よくある質問#
Q. いま開いている数字にビュースルーが入っているか、どこで分かりますか?
A. Google広告には、ビュースルー専用の数字があります[1]。主要なコンバージョンの数字を見ているなら、そこにビュースルーは入っていません。Metaなら、広告セットに選んだアトリビューション設定を確認します[2]。
Q. クリックした人だけで測り直したROASが1倍を切ったら、止めるべきでしょうか?
A. その数字だけで決めないでください。判断に使うのは、1つの基準にそろえたROASと、配信別に見たクリックの取れ方の2つです。
Q. RevenueScopeでビュースルーの分を除外できますか?
A. 除外はできません。クリックスルーとビュースルーを分けているのは媒体の側で、RevenueScope が受け取るのは媒体の申告値をそのまま取り込んだ数字です。RevenueScope が計測するのは、自社サイトに着地した購入です。
まとめ#
ディスプレイ広告だけコンバージョンが多く出るのは、見ている数字にビュースルーの分まで含まれているからです。Google広告で「コンバージョン」の数字を見ているなら、そこにビュースルーは入っていないので、原因は別にあります。Google広告のディスプレイでは、画面内に広告の50%以上が1秒以上表示された最後のインプレッションに関連付けられます[1]。この基準は媒体ごとに異なるので、媒体をまたいだROASの大小には意味がありません。
比較が成立するのは、分子をそろえたときだけです。自社サイトで発生した購入を流入元に帰属させた売上なら、どの媒体にも同じものを使えます。
来月の増額先を決める前に、手元のROASの分子が何かを1行で言えるか確かめてください。
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