同じ商品でも、価格の見せ方しだいで売れ行きは変わります。1,000円を980円にするだけで、ぐっと安く感じてもらえることがあります。これが心理的価格設定です。本記事では、端数価格・松竹梅・アンカリングという3つの型をやさしく整理したうえで、その効果を売上総額ではなく、訪問1回あたりの売上(RPS)と客単価(AOV)の前期比でどう見分けるかまでを、図を交えて解説します。
まとめ解説動画
目次
この記事のまとめ#
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心理的価格設定は「感じ方」を動かす値づけ
原価や競合に合わせるだけでなく、お客様がどう感じるかを計算に入れて価格を決めます
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3つの型=端数価格・松竹梅・アンカリング
端数価格で割安感、松竹梅で真ん中を選んでもらい、アンカリングで基準をつくる。利益を守りながら客単価を動かします
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効果は売上総額では見えない
売上総額は集客数でも動くため、価格を変えた効果だけを切り出すには別の指標が要ります
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見るのはRPSとAOVの前期比
訪問1回あたりの売上(RPS)と客単価(AOV)を、直前の同じ長さの期間と比べて効果を確かめます
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RevenueScopeは価格を決めない。効果の測定を担う
価格の設定や最適化はしません。価格を変えた後のRPS/AOVを、チャネル別に前期比で見せる道具です
1.心理的価格設定とは:価格は「数字」より「感じ方」で決まる#
心理的価格設定とは、お客様の「感じ方」を計算に入れて値段を決めることです。同じ金額でも、見せ方しだいで高くも安くも感じられます。
価格の決め方には、原価に利益を乗せる方法や、競合に合わせる方法があります。心理的価格設定は、ここに「お客様がどう感じるか」という視点を足す考え方です。価格の決め方の全体像はプライシング戦略で整理しています。
人は価格を、計算ではなく印象で受け取ります。980円と1,000円は20円しか違いませんが、受ける印象は大きく変わります。下の図は、同じ商品でも端数価格にしたときに「安い」と感じる人が増える様子を表したイメージです。

国内のEC市場は伸び続けており、似た商品が比較される場面も増えています[1]。だからこそ、ただ安く見せることより、利益を守りながら「ちょうどよい」と思ってもらう設計が効いてきます。次の章では、その代表的な3つの型をまとめて見ていきます。
2.3つの型を使い分ける:端数価格・松竹梅・アンカリング#
端数価格・松竹梅・アンカリングは、効きどころの違う3つの型です。割安感をつくる、真ん中を選んでもらう、基準をつくる、と役割が分かれます。
端数価格:980円が1,000円よりぐっと安く感じる#
端数価格とは、キリのよい数字を少しだけ下回らせる値づけです。1,000円を980円に、2,000円を1,980円にする見せ方を指します。理由は、人が価格を左端の数字から読み取り、最初の桁で「高い・安い」を大まかに判断するからです。1,000円の左端は「1」、980円は「9」。たった20円の違いでも、左端が変わると実際の差以上に安く感じられます。
ただし、どこでも効くわけではありません。高級品や信頼を売る商品では、980円のような表示が「安っぽい」印象を与えることもあります。日用品や比較されやすい商品では効きやすく、ブランド品では定価のキリ数字が似合う、と使い分けます。
松竹梅:3段階で真ん中を選んでもらう#
選択肢が2つだけだと、人は安いほうに流れやすくなります。そこで、あえて高い選択肢を一つ加えます。松(高)・竹(中)・梅(低)の3段階にすると、多くの人が真ん中の竹を選びます。一番高い松があることで、竹が「いちばん高い選択肢」ではなくなり、極端を避けたい心理から「ちょうどよい」に見えるためです。松はそれ自体が売れなくても、竹を引き立てる役目を果たします。
設計のコツは、本当に売りたい商品を竹に置き、松を竹より明確に高くすることです。差が小さいと、引き立て役として働きません。松竹梅は、まとめ買いやセット販売とも相性がよく、客単価を底上げします。考え方はクロスセルでも扱っています。
アンカリング:先に見せる価格で基準をつくる#
人は、最初に見た数字を「基準(アンカー)」にして、その後の価格を判断します。先に高い価格を見せておくと、実際に買う価格がそれより安いとき、強くお得に感じられます。よく見るのが、定価に取り消し線を引いて販売価格を書く見せ方です。「12,000円→8,000円」と示すと、8,000円が単独で出ているより割安に見えます。
注意したいのは、見せかけの定価を使わないことです。最初から売る気のない価格に線を引くのは、二重価格表示として景品表示法で問題になります[2]。アンカーに使うのは、実際に売っていた価格や正規の上位プランなど、根拠のある数字に限ります。
松竹梅とアンカリングは、どちらも1回の注文額(客単価)を押し上げる型です。下の図は、見せ方を変える前を100としたときに、客単価がどう動くかを表したイメージです。

なお、これらは値引きとは別物です。値引きは定価そのものを下げて利益を削りますが、心理的価格設定は見せ方で「感じ方」を動かすため、利益を保ちやすい型です。割引の設計は割引・値下げの決め方で整理しています。客単価そのものの考え方は客単価(AOV)の基本も参考になります。
3.効果は売上総額でなくRPSとAOVで測る#
価格の見せ方を変えた効果は、売上総額ではなくRPSとAOVで測ります。売上総額は集客数でも動くため、それだけでは価格の効果を切り出せません。
端数価格や松竹梅を試したあと、「売上が増えたから成功」と決めるのは危険です。売上総額は、価格の効果だけでなく、その期間の集客数でも動きます。たまたま広告を増やしていれば、価格の効果は集客に紛れて見えなくなります。
そこで2つの指標を使います。1つは、AOV(客単価)= 売上 ÷ 注文件数。松竹梅やアンカリングで、1回の注文額が上がったかがわかります。もう1つは、RPS(訪問あたり売上)= 売上 ÷ セッション数。端数価格で購入率が上がったかも含めて、来訪1回あたりの売上で効果を見ます。RPSの考え方はRPSの計算式と出し方で扱っています。
比べ方にはコツがあります。前後を任意のA/Bテストで切り分けるより、まずは直前の同じ長さの期間(前期比)と見比べるのが手軽で確実です。下の図は、価格表示を変えたあと、チャネル別にRPSがどう動いたかを前期比で表したイメージです。同じ施策でも、伸びるチャネルと前期割れするチャネルに分かれます。

ここで問題になるのが、GA4ではこの切り分けが手間な点です。GA4は来訪(セッション)起点の設計で、価格を変えたあとにRPSが流入元ごとにどう動いたかを前期比で見比べるのは、構造的に手作業の組み直しになります。
RevenueScopeの解決策
ここまでの「効果を売上総額でなくRPS/AOVの前期比で見分ける」が、実際にどう見えるかを見てみましょう。RevenueScope は、GA4とサイトの売上データから、価格表示を変えたあとの売上効率をチャネル別に1画面にまとめます。表示する指標は RPS(訪問あたり売上)/AOV(客単価)/CVR(購入率) と、その前期比です。
「価格表示を変えてから、どのチャネルでRPSが伸びた?」と聞くと、こう返ってきます。
| チャネル | RPS(訪問あたり売上) | RPSの前期比 | 客単価(AOV) | 購入率(CVR) |
|---|---|---|---|---|
| メルマガ | ¥320 | +18% | ¥4,000 | 8.0% |
| Google検索 | ¥210 | +9% | ¥3,500 | 6.0% |
| Instagram広告 | ¥95 | −12% | ¥5,300 | 1.8% |
(表示はRevenueScopeでチャネル別に見たときのイメージ。数字はデモデータ。)
この一覧を読むと、価格を変えた効果がチャネルごとに分かれて見えます。メルマガは前期比でRPSが+18%、Instagram広告は−12%。売上総額で見れば埋もれてしまう差が、訪問あたりの前期比でははっきりします。次の一手は明確で、効率が伸びたメルマガとGoogle検索に予算を寄せ、前期割れのInstagramは増額を一度止める、という判断ができます。
ここで大事な境界があります。RevenueScope は、価格そのものを設定したり最適化したりはしません。端数価格にするか、松竹梅をどう組むかは、事業者が決める領域です。RevenueScope が担うのは、価格を変えた「後」の効果測定です。全体のRPS/AOV/CVRを前期比で出し(get_summary)、チャネル別の内訳でどの流入が伸びたかを、売上起点で見せます。価格を決める道具ではなく、決めた結果を数字で確かめる道具だと考えてください。
FAQ#
Q. 端数価格は980円のように「8」で終わらせるべきですか。
A. 決まりはありません。大切なのは、左端の数字を一つ下げることです。1,000円を980円や990円にすれば、左端が「9」に変わります。8でも9でも、キリ数字を少し下回らせて左端を変える点が共通の狙いです。
Q. 価格を変えた効果は、売上総額で見てはいけないのですか。
A. 売上総額だけでは判断できません。総額はその期間の集客数でも動くため、価格の効果が集客に紛れます。訪問あたり売上(RPS)と客単価(AOV)を、直前の同じ長さの期間(前期比)と比べると、価格の効果だけを切り出せます。
Q. RevenueScopeで最適な価格は出せますか。
A. いいえ。RevenueScopeは価格の設定や最適化はしません。出すのは、価格を変えた後のRPS/AOV/CVRと、その前期比・チャネル別内訳です。価格をどう見せるかは事業者が決め、その効果の測定をRevenueScopeが担う、という使い分けになります。
まとめ#
価格は、数字そのものより「どう感じられるか」で売れ行きが変わります。端数価格で左端の数字を一つ下げ、松竹梅で真ん中を選んでもらい、アンカリングでお得感をつくる。この3つは、利益を守りながら客単価を動かせる型です。
そして肝心なのは、効果を売上総額で判断しないことです。総額は集客数でも動くので、価格の効果は訪問あたり売上(RPS)と客単価(AOV)の前期比で見分けます。どのチャネルで効率が伸びたかを前期比で見比べられる状態を一度つくっておくと、見せ方を変え、数字で確かめる、という順番で心理的価格設定を使いこなせます。
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