「GA4はもう入れましたか?」と聞かれたら、日本企業の多くは「はい」と答える。2022年のある調査では、企業Webマーケティング担当者の71%がGA4を導入済みと回答しています[1]。
ではもう一つ聞きます。「GA4でレポートの自動化まで設定していますか?」— この問いに「はい」と答える企業は、わずか11%。2023年の調査結果です[2]。
本記事は、導入率だけを見ていると見落とす 「設定の壁」と「活用の壁」 を、日本国内の公開調査データで整理します。結論から言えば、GA4の導入は進んだが、完全活用まで到達した企業はごく少数です。その理由と、EC事業者にとっての含意を見ていきます。
この記事のまとめ#
- 導入は7割、自動化は1割。GA4導入率は上がったが、レポート自動化や予測オーディエンスの活用まで到達している企業はわずか
- 全回答者の50.7%が「データの最適な活用方法」を難しいと感じている(n=535、2024年調査)。ツールは入れたが使いこなしに壁がある
- EC事業者が次に必要なのは、「設定→活用」の距離をゼロに近づけるもう1枚のレンズ
1. BtoC-EC市場は物販だけで15.2兆円、EC化率9.78%#
まず、この話がどれだけの市場を対象にしているのかを確認しておきます。
経済産業省の**「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)によれば、2024年の日本国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円**(前年比5.1%増)。内訳は以下の通りです[3]。
| 分野 | 市場規模 | 前年比 |
|---|---|---|
| 物販系 | 15兆2,194億円 | +3.70% |
| サービス系 | 8兆2,256億円 | +9.43% |
| デジタル系 | 2兆6,776億円 | +1.02% |
物販系のEC化率(商取引全体に対するEC比率)は9.78%。分野別では 書籍・映像・音楽ソフトが56.45%、生活家電・AV機器・PC周辺機器が43.03%、生活雑貨・家具・インテリアが32.58% と、半数近くがオンラインで買われる分野も存在します。
15兆円規模の物販ECで事業を営む事業者にとって、「広告と売上の関係を正しく見られているか」は事業の生命線です。では、その測定の主戦力であるGA4の活用実態はどうなっているか。ここから3つの調査を重ねて見ていきます。
2. GA4の導入は進んだ — でも「基本設定」で足が止まる#
最初に普及率の話です。2022年6月に株式会社Hagakure(デジプロ運営)がWebマーケティング担当者1,009名を対象に実施した調査では、GA4導入済み企業は71%[1]。UAのサポート終了(2023年7月)前の時点で、すでに7割が導入に動いていました。
なお、この直後に紹介するオーリーズ調査の「移行済み25%」(2023年10月)とは数字が大きく異なりますが、両者は指している状態が違います。Hagakure調査は「GA4を使い始めた(プロパティ作成済み)」ベース、オーリーズ調査は「UAから完全移行が完了し、カスタム設定も含めて本格運用に入った状態」ベースと読むのが自然です(設問の選択肢構成からの推測)。
問題はここからです。株式会社オーリーズが2023年10月、事業会社のマーケティング業務で広告運用に携わる担当者248名に行った調査結果を見てみましょう[2]。
GA4への移行状況:
- 移行済み: 25%
- 移行設定の途中: 28%
- 移行設定に着手できていない: 29%
- GAの活用を終了: 6%
さらに、「どのような設定をしましたか」(複数回答)への回答は以下の通りでした。
| 設定項目 | 実施率 |
|---|---|
| アカウント設定をした | 35% |
| GA4タグを設置した | 31% |
| 見たい指標を計測するためにカスタムコンバージョンなどを設定した | 23% |
| より効率性を上げるためにレポートの自動化などを設定した | 11% |
基本設定(アカウント・タグ設置)で約3割、カスタム設定で約2割、レポート自動化まで到達したのは約1割。GA4の「入口」は越えたが、日々の運用で効率よく使い続けられる状態まで整えた企業は少数派、という現実が数字で見えてきます。
3. 導入できた企業も、活用には壁を感じている#
ここまでは「設定の壁」。次は「活用の壁」です。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社が2024年9月に実施し、同年12月に公表したアクセス解析ツール利用実態調査(事業会社のマーケティング担当者535名)から、全回答者を分母にした数字を引きます[4]。
「アクセス解析ツールのデータを活用する際に、難しいと感じることを教えてください」(Q7・複数回答・n=535)の結果:
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| データの最適な活用方法 | 50.7% |
| データを目標やKPIに結びつけて分析すること | 49.7% |
| データのどこに注目すべきか判断すること | 46.0% |
| 正確なデータを取得するための設定の方法 | 40.2% |
| 外部ツールとのデータ連携や統合 | 30.8% |
半数が「データの最適な活用方法」を難しく感じている。KPIとの結びつけや、どこに注目すべきかの判断も、半数近くが課題と回答しています。同じ調査では、「データを活用できている」と回答した489名のうち72.7%が肯定的に自己評価している一方、全回答者535名を分母にすると半数前後が最適な使い方に課題を感じている — 自己評価と実態の二層構造が浮かびあがります[4]。
必要なサポートとしては**「データの分析と解釈」55.9%、「分析結果を元にした施策の立案」48.2%** と、分析結果を施策に変換する手前でサポートを求める声が上位を占めました[4]。
4. 導入7割・自動化1割のギャップが意味すること#
3つの調査を重ねると、「GA4と日本企業」の現在地がはっきりします。
| フェーズ | 指標 | 現状 |
|---|---|---|
| 導入 | GA4導入率 | 71%(2022年・デジプロ) |
| 基本設定 | アカウント設定・タグ設置到達率 | 31〜35%(2023年・オーリーズ) |
| 完全活用 | レポート自動化到達率 | 11%(2023年・オーリーズ) |
| 活用実感 | データの最適な活用方法に課題 | 50.7%(2024年・富士フイルムBI) |
導入は進み、設定は途中で止まり、活用には半数が壁を感じている。これが日本のマーケ現場で実際に起きていることです。
重要なのは、この構造が単なる「GA4の使い方が難しい」という話ではないことです。ツールは入れたが、日々の意思決定(広告配分・施策判断)に直結するところまでは届いていない。意思決定に必要な「一画面で即答できる状態」と、GA4の探索レポートを何枚も組み立てる運用の間に、距離がある。
EC事業者の視点に引き寄せるとこうなります。
「昨日Instagram広告に5万円使った。いくらが売上になった?」
この問いに3秒で答えられるダッシュボードを持っているEC事業者は、おそらく「11%」の中にもほとんどいません。完全活用の壁の一番奥には、「広告と売上の関係が一画面にない」 という根本課題が残っています。
5. RevenueScopeが提案する「設定→活用」最短ルート#
ここまでの課題を踏まえて、私が作っているツールの話を少しだけ。
RevenueScopeは、EC事業者向けに「広告チャネル × 売上」を1画面で可視化することに特化したアクセス解析サービスです。GA4との関係は「置き換え」ではなく「補完」。GA4がサイト構造の最適化(間接指標)を担当し、RevenueScopeがチャネル別の売上貢献(直接指標)を担当する — 役割分担で設計しています。
- タグを1つ貼るだけ。GTMでもHTML直挿しでもOK、エンジニア不要
- GA4のeコマース設定済みなら追加設定ゼロ
- チャネル別のセッション数・売上・RPS・AOV・CVRが1画面
「設定はしたけれど、自動化やカスタム分析までは手が回らない」— オーリーズ調査の「11%の壁」の外側にいる約9割のEC事業者にとって、「設定が終わった瞬間から使える状態」 は現実的な次の一歩になります。
なお、関連記事として以下を併せて読むと理解が深まります。
- GA4は売上を見るツールではない — EC事業者が見落とす「直接指標」(3分・GA4の本来の役割を整理)
- 広告予算の判断を歪める『ラストクリックの罠』(5分・4モデル使い分けの具体例付き)
参考文献#
- Hagakure(デジプロ) 「GA4導入状況に関するアンケート調査」 2022年7月
- オーリーズ 「Googleアナリティクス4の活用状況に関する実態調査」 2023年10月
- 経済産業省 「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」 2025年8月
- 富士フイルムビジネスイノベーション 「アクセス解析ツールの利用実態調査」 2024年12月
