検索の約半分で、AIによる概要が最上部に出ます。しかもそこで引用されるページは、同じキーワードの通常の検索結果とほとんど重なりません。査読を経た国際会議の論文が、実ユーザーの検索キーワードを測ってそう報告しました。「順位を上げればAIにも引かれる」が自動では成り立たない、という話です。
目次
この記事のまとめ#
- 実ユーザーの検索キーワード5,000件で測ると、51.5%でAIによる概要が生成されていました。研究用の質問集を含む11,500件では65.6%
- AIによる概要の引用元と、同じキーワードの通常の検索結果は、重なりが約18%しかありません。10件のうち両方に出るのは2件弱で、上位にいても引かれない、上位になくても引かれる、が両方起きます
- ただし順位が無関係なわけではありません。別の大規模調査では引用の約38%が検索上位10位のページ由来。順位は影響するが、それだけでは決まらない、という両立で読むのが正確です
- 調査ごとに数値が食い違うのは、測った時期・対象・数え方が違うから。英語圏の測定でもあるため、比率は自社のデータで確かめるのが安全です
1. 検索の51%にAIによる概要|何を調べた研究か#
実際のユーザーが打つ検索キーワードで測ると、約51%でAIによる概要が生成されていました。10回検索すれば5回は、通常の検索結果の上にAIの回答が載っている計算です。
この数値を報告したのは『生成AIは検索をどう変えるか:Google検索・Gemini・AIによる概要の実証研究』という研究です。原題は "How Generative AI Disrupts Search: An Empirical Study of Google Search, Gemini, and AI Overviews"[1]。同じ検索キーワードをGoogle検索・Gemini・AIによる概要の3つに投げ、結果を比べています。どんなキーワードでAIによる概要が出るのか、出たときに何を引用するのかを大量に集めました。情報検索分野の国際会議SIGIR 2026に採択されています。
51.5%と65.6%、どちらを見るか#
研究では合計11,500件のキーワードを9種類の集まりに分けて投げています。全体でAIによる概要が生成されたのは65.6%でした。ただしこの数値には、研究用に作られた質問集も含まれます。実際のユーザーが検索エンジンに打ったキーワードを集めたORCASというデータセットの5,000件に絞ると、生成率は51.5%。論文自身が、実ユーザーの検索を代表する値としてはこちらが最も妥当だと書いています。だから本記事でも51%のほうを軸に置きます。
出やすい検索、出にくい検索#
生成率はキーワードの形でかなり変わります。解説を求める質問では94.6%、質問の形をしたキーワードでは86.2%、単語を並べただけのキーワードでも76.5%。疑問形かどうかで割ると、疑問形89.9%に対して非疑問形は51.9%でした。問いの形をしているほど、AIによる概要は出やすくなります。
ECに影響するのは、その反対側です。Amazonの商品検索から取ったキーワードでは、生成率は17.4%まで落ちます。商品名や型番のような、買う直前に打たれるキーワードでは、AIによる概要はあまり出てきません。逆に、商品を比べる問いや商品についての質問文では、論文はAIによる概要が高い割合で出ると報告しています。ただしこれらは研究側が作った質問文で、実ユーザーの検索そのものではありません。ECサイトが記事で集めている流入は、たいてい後者の検討段階です。AIによる概要の影響を最も強く受けるのは、購入の手前で読まれるページのほうだ、ということになります。

なお、この測定は2025年12月7日から8日にかけて、米国のニュージャージーからスマートフォンで、英語のキーワードで行われたものです。日本語の検索にそのまま当てはめられるかは3章で扱います。
2. 引用元は検索上位と別|重なりは2割止まり#
AIによる概要が引用するページと、同じキーワードの通常の検索結果に並ぶページは、ほとんど別物でした。ここが今回の論文の核心となる数値です。
「10件中2件弱」しか重ならない#
研究では、AIによる概要が引用したURLの集合と、同じキーワードの検索結果に出たURLの集合が、どれだけ重なるかを測っています。使われたのはJaccard類似度という指標で、両者の平均は0.18でした。どちらか一方にでも出た引用元を10件並べると、両方に出るのは2件弱という意味です。残りの8割強は、片方にしか出ていません。実ユーザーの検索キーワード5,000件に絞っても0.17で、ほぼ同じでした。キーワードの種類ごとに幅があり、Amazonの商品検索では0.08、賛否の分かれる質問では0.24です。

よくあるのは次の状況です。順位は落ちていない、クリックも極端には減っていない。それなのにChatGPTやGeminiに同じことを聞くと、自社のページは出てこず、競合ばかりが挙がってくる。SEOの側をいくら見直しても悪いところが見つからない、という相談は珍しくありません。重なりが2割止まりという測定は、この状況の構造的な説明そのものです。上位に出ていても引用されないことも、上位になくても引用されることも、どちらも普通に起きます。
「順位は関係ない」は言い過ぎ#
ただし、これを「順位は関係ない」と読むのは行き過ぎです。別の大規模調査では、AIによる概要の引用のうち約38%が検索上位10位のページから来ていると報告されています[2]。上位10ページはウェブ全体から見ればごく一部ですから、そこから4割近くが引かれているのは、順位が影響している証拠です。
この2つの結果は両立します。順位を上げる投資が無駄になるわけではなく、同時に、上げたからといってAIによる概要に引かれるとは限りません。現場では「AIによる概要は検索順位に基づいている」という見方と、「選び方は従来のSEOと別物だ」という見方が今も分かれています。測定が示したのは、そのどちらでもありませんでした。順位は要る材料だが、それだけでは決まらない、という中間です。
引用される側の条件そのものは、別の研究が対照実験で調べています。内容が問いに直接答えているかと掲載順位が2大条件だった、という報告は【研究報告】AIに引用される2大条件で扱いました。今回とは別の論文ですが、順位が効くという方向は一致しています。
なお、順位が変わらないのにクリックだけが減っている場合もあります。原因がAIによる概要なのか別の要因なのかを切り分ける手順は検索順位は同じなのにクリックが減るにまとめました。本記事では切り分けには立ち入りません。
3. 調査で数値が違う理由|測り方の差を知って読む#
同じテーマの調査でも、数値は大きく食い違います。測り方が違うからで、そこを見ずに数値だけを引用すると判断を誤ります。
半年で76%から38%へ動いた数値#
先ほどの約38%には続きがあります。同じ調査元が2025年7月に出した数値は、約76%でした。それが2026年3月更新版では約38%まで下がっています。更新版は86.3万キーワード・400万URLという規模で測ったものです[2]。半年で半分になったのは、AIによる概要そのものが変わり続けているからでもあり、測る対象や時期が違えば数値は動くからでもあります。
さらに、今回の論文の「重なりは約18%」と、この「約38%」は、そもそも別のものを測っています。38%は、引用された1件1件について「それは検索上位10位のページか」を数えた割合です。論文のJaccardは、引用リスト全体と検索結果リスト全体という2つの集合が、どれだけ一致するかを見ています。片方の集計は引用1件ごとの出どころを数え、もう片方はリスト同士の一致を数えています。

外部調査を読むときに確かめる3点#
数値を参照する前に、いつ測ったか、どのキーワードの集まりを測ったか、何を数えた割合かを確かめてください。この3つが揃わない数値同士は、そのまま比べられません。今回の論文も、2025年12月・米国・英語という条件での測定です。日本語の検索、日本のECで打たれるキーワードで同じ比率になる保証はありません。
だから外部調査は、方向性を把握するためのものと考えるのが妥当です。自社のどのページがAI経由で読まれ、そこからいくら売れているかは、自社のデータでしか出ません。
無料の手段では、どこで詰まるか#
では自分で確かめられるかというと、すぐに詰まります。Google Search Consoleの検索パフォーマンスは、表示回数もクリックも合計で数えます。AIによる概要の中に出た分だけを切り出す欄はありません[3]。何がどこまで見えるかはGSCのAI検索レポートの読み方に整理しました。表示回数そのものの数え方に注意がいる点はAIモードの表示回数で扱っています。
順位から推し量る手もありますが、引用元が異なる以上、順位はAI側の答えになりません。残るのは検索結果を自分の目で見に行く方法です。ただし確認はページとキーワードの組み合わせの数だけ必要で、結果も変わります。考え方は難しくありませんが、毎週の再確認を続けるのが重たく、そこが壁になります。
RevenueScopeの解決策
RevenueScope は、AI経由の流入をページ別に実測します。ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityから実際にクリックされて来たセッションを、着地したページごとに数えます。そのページで立った売上(着地売上=そのページを入口にしたセッションの売上。回遊した先での購入も入口ページに寄せます)まで表示します。AI経由の流入は、リンク元の目印(referrer)を渡すAIの分を数えます。これは下限側の数え方になりますが、どのツールでも共通する前提です。
さらに、コンテンツ改善案のページ一覧には、疑いフラグのバッジを添えます。「検索結果を確認」は、検索の表示回数はあるのにクリックが少なく、検索結果の上部が別の要素に占められている疑いのあるページ。「AI引用あり」は、検索クリックが減ってもAI経由の流入が続いているページです。検索結果の見た目そのものを観測するわけではないので、断定ではなく疑いとして提示し、手を入れる前の判断材料にします。
| ページ | 検索クリック | AI経由セッション | 着地売上 | バッジ |
|---|---|---|---|---|
| /blog/skincare-order-guide | 12 | 34 | ¥41,200 | AI引用あり |
| /blog/sensitive-skin-routine | 8 | 21 | ¥28,600 | AI引用あり |
| /blog/pore-care-basics | 96 | 4 | ¥12,400 | なし |
| /products/serum-blanc | 3 | 2 | ¥5,800 | 検索結果を確認 |
※ 一事例(イメージ)です。サンプルデータのフィクションサイトです。
この事例では、検索クリックが12しかない /blog/skincare-order-guide が、AI経由34セッションで最も売上を作っています。検索クリックだけを見て手を入れる対象を決めていたら、真っ先に書き直す候補に挙がっていたページです。逆に検索クリック96の /blog/pore-care-basics は、AI経由の流入がほとんどありません。論文が示した引用元のずれは、自社のページ単位でも同じ傾向として確認できます。どのページがAI経由で売上を作っているかは、実測でしか分かりません。
FAQ#
よくある質問#
Q. 検索順位を上げれば、AIによる概要にも引用されますか?
A. 順位は効きますが、それだけでは決まりません。引用の約38%は検索上位10位から来ている一方で、引用元の集合と検索結果の集合の重なりは約18%止まりでした。順位を上げる投資は引用される可能性を押し上げますが、上位にいるのに引用されないページも普通にあります。
Q. 自社がAIによる概要に引用されているか、どう確かめればいいですか?
A. 見る観点は2つです。1つ目は、AIから実際にクリックされて来た流入がページ別にどれだけあるか。2つ目は、検索の表示回数はあるのにクリックが少ないページがどれか。前者はAI経由の売上に直結し、後者は検索結果の上部で何が起きているかを疑う手がかりになります。検索結果を1件ずつ目で見て回る方法もありますが、ページとキーワードの数だけ確認が必要で、結果も変わります。
Q. この51%は、日本語の検索にも当てはまりますか?
A. そのままは当てはめられません。測定は2025年12月に米国から英語のキーワードで行われたものです。「検討段階の問いではAIによる概要が出やすく、商品名の検索では出にくい」という方向は参考にできますが、比率は自社のデータで確かめてください。
Q. 引用されれば、売上も増えますか?
A. 引用されることと、売上が立つことは別です。引用からクリックして来た人が、どのページに着地して、いくら買ったか。そこまで見て初めて投資の答え合わせができます。検索クリックが0のページを消すかどうかの判断は0クリックでもChatGPTが選ぶ記事で扱っています。
まとめ#
実ユーザーの検索キーワードで測ると、51.5%でAIによる概要が生成されていました。そして引用元は、同じキーワードの検索結果と約18%しか重なりません。順位が良いのにAIには出てこない、という現場の困惑は、このずれで説明がつきます。一方で引用の約38%は検索上位10位由来という別調査もあり、順位は効く材料ではあります。効くが十分ではない、が両方を満たす読み方です。
数値が調査ごとに食い違うのは、測定の時期・対象・数え方が揃っていないからです。今回の論文も英語圏・2025年12月時点の測定で、比率をそのまま自社に当てはめることはできません。外部の平均値からは方向性しか分かりません。自社のどのページがAI経由で読まれ、そこからいくら売れているかを、ページ別に1度出す。その実数が判断の起点になります。
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